歌舞伎俳優・6代目・中村勘九郎さんは絶対的存在だった父・十八代目・中村勘三郎さんに対し、一度だけ反抗したことがある。勘九郎さんは理不尽なことがあり、壁を殴ったら穴が開いてしまった。勘三郎さんは、オレだって出来るんだよと言い壁に穴を開けたという。それ以来、そこの壁の穴には家族写真が飾られているそう。勘三郎さんは歌舞伎俳優として、人間としても一枚も二枚も上手だった。そんな勘三郎さんからのメッセージを、勘九郎さんは大切にしている。それは「頑張らない」。勘九郎さんは「若いうちは頂いた役を一生懸命がんばろうとやっていたが、父から全力でやるとお客さまが疲れる。70%、80%の力でやり、120%、150%に見せろと言われた。この年になってようやく頑張らないということが分かって来た。しかしそれは100%、120%でやっていたから80%、70%に落とせる。力をそいだ時に余裕、余韻など、役によって生まれて来て、お客さまの前のめり感、舞台に引き込まれる雰囲気をより感じるようになった」とコメント。中村一門で行う特別公演は、敷居が高いイメージがある歌舞伎だが、普通の演劇のように楽しんでくださいと話すと反応が全く違うといい、トークコーナーやミニ歌舞伎塾を入れている。いい意味で頑張らず、歌舞伎の裾野を広げていきたいと日々邁進している。そんな勘九郎さんがどうしてもやめられないのがビールとつまの魚卵。「痛風寸前の尿酸値」とのことで、奥さんからは止められているが、いないときは飲んでいると話した。