名門大名家の出身ながら、絵師となった酒井抱一は、この庭の美を最も体現した。大作の夏秋草図屏風は重要文化財にもなっている。銀箔を背景に群青の川が流れる。右隻には、夕立にしなだれる夏の青芒に女郎花の花が。幾重にも弧を描く葉に隠れて白い百合の花が。美しいものは葉陰の奥にある。左隻には、ざわめく秋のススキに野葡萄がからみあい、折からの強い風に藤袴の花が絶えてうつむく。葛の葉が、風に乱れツルが踊る。移ろう季節のもののあわれ。
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