20年ぶりとなる新紙幣の発行まで、きょうであと1か月。新1万円札の顔・渋沢栄一のアンドロイドがいる埼玉県深谷市の記念館の来館者数は、去年に比べて約1．4倍増加している。近くの道の駅おかべも渋沢フィーバー。前回2004年は当時の小泉純一郎首相が日本銀行を視察。現在の千円札、野口英世のそっくりさんまで登場。銀行には新紙幣を求める人が押し寄せ、百貨店も記念セールを行うなど盛り上がりを見せた。
今回、偽造防止のため新紙幣が発行される。ATMを製造する会社「OKI」は新紙幣への対応に追われている。OKIは新紙幣に対応したATMの需要などで、昨年度の生産台数が前年の約2倍に増加。新紙幣対応の設備投資による経済効果は国内全体で約5000億円（日本自動販売システム機械工業会の試算）。一方、千葉・旭市にあるラーメン店・濃厚鶏らーめん106では新紙幣への対応が負担となっている。ただでさえ物価高に悩まされているが、原材料の値上げと新紙幣対応の部品交換で約15万円の出費。券売機のリニューアルを機に、今月からラーメンの値上げに踏み切った。コインパーキングを運営するミノラス不動産でも精算機のお札を読み取る部品を新紙幣対応のものに交換。経費節約のため、社員自ら作業を行っている。日本自動販売システム機械工業会によると、新紙幣発行に間に合うコインパーキングは全体の半数程度で、飲料などの自販機も対応が追いつかない可能性がある。新紙幣発行による意外な効果もある。高齢者を中心に家計に大量の現金を保管する「タンス預金」は日本全国で約60兆円と推計されている。現在の円安の影響もあり、ドルなどの外貨や安全資産である金に換える動きが起きると予想。日本銀行は新紙幣発行後もこれまでの紙幣は今まで通り使えるとして、詐欺行為に注意するよう呼びかけている。