観光客で賑わう京都の町並み。屋根にある人形の正体は鍾馗さん。元は中国の厄除けの神様で屋根に飾る風習は江戸時代に広まったという。鬼瓦が跳ね返した邪気によって向かいの家の住人が病にかかった。診察した医師は鍾馗像を飾ることで邪気を打ち払うよう提案。すると病が治ったという。この噂が広まり京都で鍾馗さんが数多く飾られるようになった。様々なモチーフの鍾馗さんがあり、京都府内には3000以上の鍾馗さんがいるという調査結果もある。陶芸家の吉田瑞希さんは鍾馗さんの制作をはじめて12年になる。大阪出身の吉田さんは京都の大学で初めて鍾馗さんに出会った。町並みにひっそり溶け込む姿に惹かれたという。吉田さんは手作業にこだわる。成形は時間勝負、時間が経てば粘土が乾燥し思い描いた形にするのが難しくなる。自らデザインした力強い顔。時間と戦いながらも力が入る瞬間。子どもが健やかに育つようオーダーを受けて制作した鍾馗さんは剣を下向きに、赤ちゃんを見つめる表情はどこか優しげ。吉田さんは「世界にひとつだけの鍾馗さんになることがすごく大事だと思っている、渡る人の事を考えながら作るとより力が入りやすい」と話した。吉田さんは手作り鍾馗さんのワークショップを定期的に開催している。この日吉田さんが案内してくれたのは向かい同士が睨み合わないよう視線をずらして設置されている鍾馗さん。陶器店の店主は、「どういういわれがあるんですかとの質問が多く、京都の家の守り神ですと説明すると納得される事が多い」と話した。ご近所との関係を大切にする京都の人の思いやりの深さを象徴する場所だという。吉田さんは「鍾馗さんを探す行為そのものが自分達の住んでいる街を好きになる、そういうふうに自分達の住んでいる街や訪れてみたい街を意識して歩いてほしい」と語った。
