世界中から観光客が訪れる京都。ある旅館は宴会場やレストランの利用がコロナ禍の前の8割ほどに留まっていてインバウンドが売り上げ回復の起爆剤になると期待している。ところが人気スポットの嵐山では「期待反面ちょっと不安反面」との声も聞かれる。コロナ禍の前から課題になっていたのは観光客が交通の妨げになること。マナー悪化を心配する声も上がっている。国宝の本殿を始め多くの重要文化財がある八坂神社の権禰宜は「過去には舞殿に外国の方が土足で乗っていたりとか、手水舎とトイレを間違えられたりとか、お参りいただけることはありがたいことだが、最低限のマナーだけは守っていただきたい」と話す。神奈川・鎌倉市の江ノ島電鉄沿いにある踏切。中国や韓国でも大ヒットしたバスケットボール漫画ゆかりの場所とされ、連日のように外国人が撮影しにやって来る。ところが車道に立ち入り撮影する人が後を絶たない。市は警備員を配置して注意を促している。しかし、状況は一向に改善されない。さらに車で乗り付けて路上駐車する人もいて度々渋滞が起きている。鎌倉小町商店会ではポイ捨てをしないよう4年前にゴミ袋を作り無料で配布した。お土産を持ち帰るような気分にさせるデザインにした。外国人観光客の側に立って行動に移しやすくなる仕掛けを考えていくことが観光地には求められているという。国内外でリゾート事業を展開する星野リゾート代表の星野佳路さんは観光客をいかに分散させるかが鍵になると指摘する。「日本は「文化観光」が強い国。どうしても東京・京都・大阪のような大都市中心の観光になりがち。世界のもう一つの柱は実は「自然観光」。ここに力を入れることは日本の地域の魅力を発信することにつながる。日本は本当に祝日が多い国で大型連休を全国統一で同じ時期に取る。特定の時期に集中して取るからオーバーツーリズムは起こりがち。フランスは全土をABC三つの地区に分けずらして取っていく方法をとっている。日本も2500万人の地域に分け1週間ずつずらして休みを取ると完全に分散する。観光客にとっては値段が安くなるし空いてくるので旅行の質が上がる。いかに日本人に長く快適に旅行してもらうか休みの制度としても考えていく」と話した。国は2030年に外国人観光客を年間6000万人にする目標を掲げている。その一方でオーバーツーリズムが課題になっているとして岸田総理は今秋にも対策を取りまとめる考えを示している。