来年度予算案の概算要求。政府の方針である防衛力の強化を巡っては、防衛省が複数の人工衛星を連携させて情報を収集するシステム「衛星コンステレーション」を構築するための費用として、3232億円を要求した。北朝鮮が弾道ミサイルの発射を繰り返す中、発射の兆候を把握する能力を高めるねらいがある。構造的な賃上げの実現も、今回の概算要求で大きな焦点の一つ。厚生労働省は、最低賃金の引き上げに伴って、従業員の賃上げと設備投資の両方を行った中小企業への助成として22億円を要求している。また、教員の処遇改善や働き方改革のために、文部科学省は、1兆5807億円を要求した。教員の給与への上乗せ分を現在の月給の4%から13%に引き上げることや、教科担任制の拡充などに必要な経費だとしている。これらの省庁の概算要求の額は、厚生労働省が34兆2763億円、防衛省が過去最大となる8兆5389億円などとなっている。一方、財務省は日銀の金融政策の転換で長期金利が上昇して、国債の利払い費が増えると見込んでいて、国債費の要求額を今年度予算を1兆9000億円余り上回る28兆9116億円とした。この結果、各省庁の概算要求の一般会計の総額は117兆円を上回り、過去最大になった。また、賃上げや少子化対策などを事業では、具体的な金額を示さない事項要求も相次いだ。このため、実質的な要求額はさらに膨らむ見通し。政府は、政策に充てる経費を借金に頼らず、税収などでどれだけ賄えるかを示す基礎的財政収支を来年度、国と地方合わせて黒字化する目標を掲げている。このため、予算編成作業では、財政規律を意識して、メリハリのある査定ができるかが問われることになる。鈴木財務相は、財政規律が緩むことにならないよう予算編成過程でしっかりと対応したい、などと述べた。