7月、神奈川県大会準決勝。1人の高校生が衝撃のプレーを見せた。打っては2打席連続HR、投げては最速148km/hのストレートで圧倒。彼は横浜高校のエースで4番、奥村頼人。松坂大輔を始め70人以上をプロの世界に送り出している名門で、2年生の春からエースを背負ってきた。滋賀県出身、親元を離れ寮生活を送る奥村の素顔は茶目っ気たっぷりな高校生。その経歴は華々しく、小学6年生で阪神タイガースジュニアに選出。中学3年生の時には速球137km/hを計測。全国の強豪約50校からスカウトがあったと言う。その中で選んだのが神奈川の横浜高校。奥村を3年間育てたのは、村田浩明監督。その指導法は、令和では珍しい熱血指導。奥村の代名詞が、最速148km/h伸びのあるストレート。だが、神奈川県大会準々決勝では自慢のストレートを2打され、2回途中で降板という屈辱を味わった。村田監督と歩んだ3年間、2人の絆を象徴する試合がある。夏の甲子園準々決勝、県立岐阜商業戦。5回途中からマウンドに上がった奥村、磨いてきたストレートで強力打線を抑えていく。試合は延長戦、奥村のストレートが捉えられる。この時ベンチには3人の控え投手がいたが、村田監督は奥村にこの試合を託した。2アウト1塁3塁、サヨナラのピンチで打席は4番坂口。この時のことを村田監督は、奥村で負けたらしょうがない、本当によくやってくれたと話した。ドラフト会議2周間前、奥村は「3年間頑張ったので、初めて褒めてほしい」と話し、村田監督は「ドラフト会議当日にとっておこう」と返した。