掛け声とともにジャンプしたのは中谷防衛大臣。元自衛官の中谷大臣は、陸上自衛隊の精鋭と呼ばれるレンジャー隊員を育てる教官だった。陸上自衛隊のレンジャー隊員は、有事の際に最前線に立って任務を行うことが想定されている。陸自で最も過酷といわれる部隊の訓練。約3か月間の厳しい教育課程を通過した自衛官だけがレンジャー隊員になれる。しかし、一部を除いた全国の部隊で、今年度中の新たなレンジャー隊員の育成を中止していたことがJNNの取材で分かった。背景を取材すると、陸上自衛隊幹部は「教育課程が『非科学的でやり過ぎ』と言われても否定できない」、陸上自衛隊・関係者は「教育を止めてでも見直しを行う必要がある」と話す。レンジャー隊員の教育を巡っては、死亡事故が相次いでいる。2021年には熊本県で、去年8月には京都府で男性自衛官がそれぞれ熱中症で搬送され死亡した。関係者によると、一部の部隊では、教官側が定められた安全管理の体制を適切に取らず、教育課程の内容を自由に決めていた実態も明らかになったという。陸上自衛隊は「情勢の変化を考えてレンジャー隊員が持つべき能力の見直しが必要になった」としている。陸自では今後、死亡事故の再発防止策などを踏まえた教育内容を検討し、新たなレンジャー隊員の育成を再開する時期を判断するという。既にレンジャー資格を持つ隊員の訓練は続けて行われるが、新たな隊員の育成が長期間にわたって全面的に中止となるのは、育成する教育が始まった1958年以来初めて。