宮城・石巻市の震災遺構 門脇小学校。この日、市内の中学生が見学に訪れていた。語り部を務めたのは東日本大震災が起きたとき門脇小1年生だった高橋輝良々さん。13年前、津波と火災が門脇小を襲った。 下校直後に揺れに見舞われた高橋さんは校庭に戻り先輩や同級生らと裏山に避難。一緒に逃げた児童や教職員は全員無事だった。今、小学校の教員を目指し仙台の大学に通っている。家族も家も無事だった自分に語る資格はないと自らの被災体験をほとんど話してこなかった。遺構となった母校に足を運ぶ勇気も持てずにいたが、大学のゼミの活動で12年ぶりに校舎を訪れたことで自分も記憶をつなぎたいと思うように。去年12月、初めて語り部に挑戦し、大切な記憶を打ち明けた。高橋さんのクラスに残されていたクレヨンの写真。クレヨンは間違いなく亡くした友人のものだと。ジャングルジムに登って高橋さんが「小学校の先生になりたいと思っているんだよね」と言うと「一緒になろう!」と言ってくれ、彼女が小学校の先生を目指していても目指していなくても一緒になろうって言ってくれたから頑張れていると明かした。当時の門脇小の校長で今は語り部として活動する鈴木洋子さん。ある日、亡き友人との思い出の品を持って訪ねてきた高橋さんの相談に乗り、語り部としてのきっかけを与えた。高橋さんは「きょうまでつなげてきた人にたくさん出会えたから私も誰かに伝えようと思えた。また門脇小が私の出発点になったことが本当にうれしい。やっぱり私は門脇生で良かったなって改めて思えた一日になりました」と語った。