能登半島地震の発生からまもなく半年。液状化の被害が相次いだ富山県の被災地では、まもなく梅雨の時期となる中、水害のリスクが高まるのではないかと不安の声が上がっている。現場を取材した。能登半島地震で2万棟余りの住宅に被害が出た富山県。液状化で多くの住宅が沈下したり、傾いたりした。自宅が準半壊となった串岡弘昭さん。今、不安なことは大雨による浸水被害だという。その理由の1つが、液状化で噴き出した砂や泥。側溝などに泥がたまると、大雨の際に排水が追いつかなくなる内水氾濫につながりかねない。市は今月も側溝に残る泥を取り除く作業を行った。さらに深刻な問題が、液状化による地盤の沈下や隆起。高岡市では、道路より50センチ以上低くなったため階段が設置された家もある。串岡さんの自宅でも、前の道路が隆起した一方で家は沈んでしまった。沈下や隆起の影響は、地区に降った雨水を川に流す排水路にも及んでいる。排水路の傾きが変わり、雨水が流れにくくなってしまった。市は仮の水路を新たに設けたが、応急対策にとどまっている。串岡さんは自分にできる対策をしようと、浸水を防ぐための土のう袋を用意している。自宅に入ったひびは、自ら塞いだ。ただ、自力での対策には限界があるという。道路や排水路などの復旧について、市は騒音など住民の生活に配慮して進める必要があるなどとして、完了は3年後と見込んでいる。長期化が見込まれる中、専門家は、被災地ではこれまで以上に水害への注意が必要だと指摘している。新潟大学・災害復興科学研究所・卜部厚志所長は「川沿いの平らなところは傾斜がないので、水がたまりやすいリスクをもともと持っていたところに液状化による災いが入ってしまっているダブルパンチ。ことしは特に水はけが悪いということで、こまめに心配をして早めの対応をしてほしい」と述べた。地区では地震のあと、地元を離れる住民も相次いでいる。串岡さんは液状化の被害に加えて、復旧が長引いて大雨でも被害が出れば、さらに多くの住民が地区を離れてしまうのではないかと懸念している。高岡市は来月にも、道路を復旧する際の高さなどを住民に示したうえで、ことし秋ごろから下水道などの復旧工事を始めることにしている。専門家によると、被災地では雨で床下に水がたまらないよう住宅の基礎などに入った亀裂を塞いだり、排水路や側溝を掃除したりするなどの対策が大切だという。