海水1リットルにつき30グラムほど含まれる塩。一般的な塩の抽出は釜で炊き上げることが多いが塩職人・田野屋塩二郎さんは完全天日塩というやりかたで塩を作る。できあがった塩は光を反射する。そうさせるのは、崩さずに残したミネラル成分の結晶。このミネラル成分こそが、塩の味に大きく関わる(Ca:苦味・渋味/K:酸味・甘味/Na:塩味/Mg:苦味)。成分によって結晶化するタイミングが違うため、職人は混ぜる感覚だけで結晶サイズを操り味を調整している。塩職人のつくった塩を使用した「究極の塩おにぎり」(大阪・関西万博のPACKN-TOで販売)は異次元のうまさと評判に。また、取材したセンチュリーコート丸の内の総料理長も「ぼくらがどういう風に使いたいのか汲み取ってくれる」と絶賛。過去には、フランスのレストランが1kg100万円で購入したこともあった。変態(褒め言葉で)とも呼ばれる塩職人がいきついたのは、料理や素材の味を塩に閉じ込める、新しい塩。やりかたは、出汁をとるように海水につける。すると、食材の成分が移り、風味ごと結晶になる。自信作のひとつが、牛丼の味の塩、とのこと。