佐賀県西部と長崎県を繋いだ西九州新幹線。嬉野市には約90年ぶりの駅ができて経済効果への期待が高まった。開業1年となる中、老舗の温泉旅館は効果を実感している。この旅館では新型コロナ流行前の2019年の宿泊数は約3万2000人、今年は4万4000人で1.3倍に増えたという。一方で新幹線の経済効果の恩恵を受けられていない状態も。武雄市にあるタクシー会社。嬉野市を含む新幹線沿線を中心に営業している。運転手不足で駅や旅館から依頼があっても長時間待たせるケースが多くなっているという。深刻な運転手不足の発端は新型コロナ。仕事が激減した影響で若手が離職するなどし、かつて50人いた運転手は35人に。しかし、新幹線開業や全国旅行支援などの影響で人出は増加。地元の観光協会などには観光客から「タクシーがつかまらない」といった声が寄せられるようになった。社長は「駅に降り立った直後にがっかりされるのは最高に良くないおもてなしだと思うので改善したいが、いちばん身近な移動手段のタクシーがいないのはかなり大変」と話す。そうした状況を受けて社長は自ら運転手としてハンドルを握る。1台でも多く車を走らせるための対応。社長がハンドルを握るのは1週間のうち4日、長い日は9時間ほど運転手として働く。社長は「タクシー乗り場に客が待っているのを見ると忍びない。「自分でよかったら行きますよ」と思う」と話した。2年目に向けて西九州新幹線の経済効果をどう広げていくのか地域全体の力が問われている。新幹線の経済効果などを研究している西南学院大学・近藤教授は「この1年間の観光客増加はコロナ禍回復や全国旅行支援など新幹線以外のプラス要因もある。開業による経済効果だけ抽出するのは難しい。新幹線などの大型インフラは日本の人口減少や経済成長率低下で経済効果が出にくくなっている。客が地域に「もう1回来よう」と思ってくれなければ一過性のもので終わってしまう。せっかくのチャンスなので継続するためには地域が魅力あるサービスを提供する。その地域にしかないものを作る努力をしてもらうことが大事」と指摘。