ニュースウオッチ9 (ニュース)
生成AI(人工知能)を巡って声優たちが危機感を募らせている。SNSに投稿されているアニメのキャラクターの声で歌を歌う動画は、生成AIを使って作られたもので、声優の声が無断で利用されている。声優などの業界団体が会見を開き、国や制作業界などに対して、AI音声の利用ルールの整備を求めた。日本俳優連合副理事長・声優・池水通洋さんは「生成AIによって文化芸術分野のクリエーターが大打撃を受け、培ってきた技能の継承ができなくなることを恐れている」と語った。声優などが加入する3つの業界団体が開いた記者会見。共同で声明を発表し、声優の声を生成AIの学習データなどで利用する場合には本人の許諾を得ることや、音声にはAIによる生成物であると明記することを求めた。演技の領域は人間が行うべきだとして、生成AIの音声をアニメや外国映画などの吹き替えで使用しないことも求めた。背景にあるのは、生成AI(人工知能)を使った声優の声の無断利用が相次いでいることだ。日本俳優連合が去年12月〜ことし2月にかけて行った調査によると、少なくとも267人の声優などの声が無断で利用されていた。ただ法律では声そのものは著作物ではないとされ、声の権利はまだ十分に確立されていないのが現状。声優・かないみかさんは「無断で私たちの声を勝手に使わないで」と語った。
生成AI(人工知能)を巡る問題。声優を目指す人たちは、どのように受け止めているのか、東京都内にある声優養成所を取材。声を生成AIで無断で利用されかねない状況について受講生たちは心外、悲しいなどの声があがった。AI(人工知能)との共存を探る動きも始まっている。AI音声サービスの開発を手がけるこちらの企業が、声優が所属する事務所と協力して進めているのが「声優の声を英語、中国語、多言語に変換、提供するサービス」。英語、中国語やフランス語への変換に対応。企業が考えているサービスモデル。声優事務所とパートナーシップを結び、声優ごとにAI音声モデルを作成。サービスを利用した企業が利用状況に応じて声優側に対価を支払う仕組み。使用目的については、音声アシスタントや館内放送などに限定。グローバル展開して新たな市場を開拓することを目指している。一方、海外向けのアニメや映画の吹き替えなど、演技に関わる部分にはサービスを提供しない。AI音声サービス開発企業広報・山田泰裕さんは「それぞれの良さをいかして声で仕事をする市場を広げることを充実していきたい」と語った。
生成AI(人工知能)を使って相次ぐ声優の声の無断利用。専門家は、今の法律の枠組みでは声そのものを保護するのは難しいとしたうえで、多方面から声の権利を守る仕組み作りが必要だと指摘。田邉幸太郎弁護士は「AIの作った物を受け取り手が声優の意思を尊重したものを選び取れるような仕組み作りとか、契約で生成AIの利用に関する事項を取り決めるようにするとか、法律だけでなく、技術的なところ、契約による対応、三位一体でやってくのが必要」と述べた。声の権利を巡る問題は、海外でも起きている。ことし発表された生成AIの音声機能の一部について、ハリウッド俳優が「自分の声に不気味なほど似ている」として抗議する事態にもなった。世界で生成AIの開発競争が激しさを増す中、ルール作りを急ぐ必要がありそう。