ベトナム 対中外交 “闘争”と“協力” 実態は

2024年12月17日放送 4:31 - 4:38 NHK総合
国際報道 SPOT LIGHT INTERNATIONAL

ベトナム中南部のクイニョンに1件のレストランがある。店主のレ・ミン・トアさんは36年前、中国との武力衝突を体験した1人。1988年、スプラトリー諸島でベトナム軍と中国軍が衝突し、ベトナム側の64人が死亡した。海軍の兵士だったトアさんは、ジョンソン南礁で測量しようとしたところ、中国海軍の艦船が接近してきたという。ベトナム海軍の兵士らは岩礁に建てた旗を守ろうとしたところ、中国軍が一斉射撃してきたという。そして中国軍に拘束されたトアさん。解放されたのは3年後の1991年。両国の国交が正常化してからだった。トアさんは30年以上たった今も当時の惨状をたびたび思い出すという。仲間が命を落としたジョンソン南礁一帯はその後中国が支配。埋め立てを進め、軍事拠点化が懸念される。
こうした経験からベトナムは東南アジアの中でも反中感情が根深いとされる。それが表に出たのが10年前。中国に抗議するデモがベトナム各地で拡大した。中国が南シナ海の西沙諸島近くに海底油田の掘削装置を設置したことをきっかけに両国の船が衝突するなど対立が先鋭化。中国に対するデモの一部が暴徒化し、中国人5人が死亡する事態となった。ところが、その後表立った対立は起きていない。その要因の1つが中国との経済関係の強化。ハノイ近郊の町では近年中国企業の進出が相次いでいる。ベトナムの好調な経済成長を支える外国からの直接投資について、これまでは韓国や日本が中心だったが、去年中国からの直接投資額が前年の倍近くに急増。香港と合わせると国・地域別で1位となった。しかし、ベトナムは南シナ海の領有権の主張を諦めたわけではない。中国との経済関係の実利を得ながら領有の既成事実化も進めるベトナム。専門家はベトナムはジレンマを抱える中でも中国との安定した関係を維持していくだろうとみている。


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