日曜報道 THE PRIME (ニュース)
脱炭素社会の救世主などと言われている電気自動車だが、ここにきて異変が起きている。EUの自動車工業会が発表する8月の新車登録台数だが、電気自動車が前の年の同じ月と比べマイナス43.9%と大幅な減少となった。去年8月、中国のSNSに投稿された浙江省の映像。ずらりと並ぶ白い車、全てEV=電気自動車。車の屋根にまで雑草が生い茂りごみのように大量に打ち捨てられている。中国では数年前から電気自動車が放置されるEV墓場が拡大している。向かったのは中国の首都、北京、大型店舗が立ち並ぶ通りにあるEVの販売店。店内をのぞくと照明はついておらず従業員の姿もない。ここは2月に操業停止となった中国の新興EVブランドハイファイの店舗。車は汚れた状態のまま放置されていた。関係者に話を聞くと、車の受け渡しに使われていた建物には多くの新車が放置されたままになっていた。中国は世界をリードする自動車強国という目標を掲げ、EVの製造や購入に対し、多額の補助金や税優遇措置を取るなどして国を挙げてEVシフトを進めてきた。しかし、この政府の補助金を追い風に中国国内におよそ500社に上るEVの関連メーカーが乱立。過剰生産が問題になり価格競争などによって現在ではおよそ400社が倒産している。こうしたことを背景に安全性の問題も指摘されている。SNSに投稿された映像、EVを充電していると突然車から煙が。充電口からも炎が立ち上りその様子に隣に停車していた車も慌てて移動、充電していた車は一瞬で炎に包まれた。中国国内ではこういったEVの火災事故が増加。去年の3カ月だけで1日平均8台の火災が発生し主にバッテリーが原因とされている。安全性への懸念の要因にもなっている中国政府の補助金などについて国際社会は問題視している。米国は中国政府の補助金による安いEVなどが世界中の製造業を廃業に追い込んでいるとして対策に乗り出した。中国製のEVへの関税を27日から、現在の4倍の100%に引き上げる。さらにEUでも最大36.3%の関税を上乗せする方針を明らかにしている。中国のEVシフトは日本のメーカーも大きな影響を受けていた。タイの首都、バンコク、かつて日本車が9割を占めていた日本車王国のタイ。街を見ると多くの日本の自動車メーカーの他に中国EVの自動車やタクシーが確認できる。タイの新車販売のデータでは日本車は9割近くのシェアを誇っていたが去年およそ76%に低下、一方で、中国EVはおよそ5倍にシェアを伸ばしている。中国による自動車価格の破壊に対抗するため欧米各国は関税措置の引き上げに加えEVへの補助金の打ち切りなどを決めている。これが世界でEV市場の成長が急激に減速している理由だとみられる。さらに専門家はEV市場の拡大を阻んでいる問題があると指摘している。日本の中古車市場でもEVの下取り価格問題が表面化している。500万円で新車購入し半年後売却した場合EVはガソリン車よりも50~100万ほど下取り価格が安くなるという。都内の中古車販売業者「2〜3年乗ったEVの下取り価格は新車価格の5割以上落ちるね」。下取り価格の低さが購入意欲をそぐ一因になっている。中古車販売店・松澤宏社長は「(バッテリーを)取り換える時普通の(ガソリン、ディーゼル)エンジンと比べて高額のバッテリーは費用がかかるのではないかとユーザーが結構不安を持っている」と話した。ガソリン車のエンジン交換→約20万円〜。EV車のバッテリー交換→約60万円〜。点検や簡単な修理でさえディーラーに持ち込まなければならない状況。販売台数の減速、下取り価格の低さ、インフラ不足などEVを取り巻く環境が厳しさを増す状況から世界の自動車メーカーはEV路線の見直しを加速化している。