プロフェッショナル File.548 ラーメン店主 森敏彰
森氏は料理人を志し、28歳で独立。シメで出していたラーメンが評判を呼び、36歳の時にラーメン店をオープン。煮込み方、具材の組み合わせなど試行錯誤を繰り返し、寸胴の横で寝ることもあった。だが、店はうまくいかない。ある時、1人の店主は豚の大腿骨、数種類の野菜だけを使い、森氏は「びっくりするぐらいシンプルな食材なのにめちゃくちゃうまい」と振り返った。森氏の足し算ではなく、引き算されたラーメンは評判となるなか、次男の直人さんが家出した。森氏の驕慢な態度が原因だったといい、店の味も悪化していった。直人さんは3人の息子のなかで森氏と思考回路が似ていて、高校時代から修行を積んでいたという。隣町に住んでいると知った森氏は10年ぶりに直人さんと会い、涙ながらに謝罪した。直人さんはトラック運転手をしながら、自分のラーメンを追い求めていた。親子の関係は修復された。常連客が久方ぶりに店にやってくると、がんで痩身になっていた。余命いくばくもないなか、「最後に食いに来た」と言ってくれ、森氏はラーメン店主冥利に尽きると思ったという。
弟子の店から身を引くと決めた森氏は新作の一杯に挑んでいた。煮干しの頭、わたを取り除き、クリアでピュアなスープにしたいという。一方、直人さんもラーメンの試行錯誤を繰り返し、森氏は見ていて面白いという。三男の智起さんにも助言を仰ぐなか、森氏は煮干しの旨味で勝負するラーメンを仕上げた。冷ましたスープに温かい麺を合わせ、自家製の鶏油でコクをプラスした。客たちの評判は上々だった。
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- 三豊市(香川)
