全身芸術家 横尾忠則88歳 (全身芸術家 横尾忠則88歳)
2023年の9月。横尾忠則から「新しい展覧会に向けた制作を始めています」という連絡があり、二瓶剛はカメラを持ってアトリエを訪れた。横尾忠則のアトリエは小さな森の中にあり、自宅から毎朝通っているという。そんな横尾忠則が絵を描いている様子が伝えられた。横尾忠則は3年前に心筋梗塞になり、目も見えなくなってきており、難聴にもなっている。横尾忠則は病気になったことで新しい画風を身につけることができて悲観してないという。横尾忠則は自分の絵に触発されて新しい絵を描いている。つまり作品がそれぞれしりとりのように繋がっていくのだという。
ここまで描いた作品は美術品のための倉庫に保管されている。この日は、関係者と絵を見ながらの打ち合わせが行われる。カタログに掲載される原稿のためだ。横尾忠則の展覧会「連画の河」について、横尾忠則がイメージする展示の形を番組でCGにして作り、作品の流れが伝えられた。
横尾忠則の生まれ故郷の兵庫県西脇市。横尾忠則は終戦間際の頃に機関銃によって死の恐怖を受けたことがあり、それが作品にも影響を受けているという。横尾忠則は20歳の頃に神戸新聞社に就職し、そこでデザインの仕事をしたという。それまではデザインの仕事に興味はなく、入社してからデザインの才能に気づき、その後はフリーのデザイナーになったという。そして世界的なデザイナーになり、45歳で突然画家に転身した。
この日は国際的に有名な文芸編集者のイギリス人のマーク・ホルボーンがアトリエにやってきた。イギリスで横尾忠則の創作人生を総括する画集の出版が予定されているためだ。その後は横尾忠則が自宅に招いてくれたので自宅の様子が伝えられた。取材中、横尾忠則のアトリエには著名人が訪れており、それは人生相談のようだったという。
兵庫県神戸市には横尾忠則の作品を専門に置いている横尾忠則現代美術館がある。そこで「レクイエム 猫と肖像と一人の画家」という展覧の様子が伝えられた。この展覧会には横尾忠則と生前関係のあった人の肖像画が描かれており、三島由紀夫からは「天に通ずる作品を作れ」と言われたと語った。そうした中で展覧会「連画の河」の後半の作品作りが行われていた。後半は「壷」を描くようになった。理由はないという。ただ後半の作品は壷を起点として進んでいった。
横尾忠則は兵庫県西脇市を訪れて、そこで小中高の同級生たちと会った。横尾忠則は同級生の写真から多くの作品を作ってきた。画家人生で最後の大仕事をするにあたって、もう一度同じ場所で写真を撮るために仲間たちに集まってもらったという。アトリエに戻ると壷とY字路と仲間たちの絵を描いた。連画シリーズ最後の作品には「MORAL」という言葉を書いた。横尾忠則は「モラルっていうのは今度の展示全体の核になるもの」と語った。
2025年4月に世田谷美術館で「横尾忠則 連画の河」が開幕した。開幕前の内覧会には多くの美術関係者が訪れたという。展覧会の創作を終えた後、横尾忠則は新たな制作を始めていた。そこで妻との作品を描いていたという。