首都圏ネットワーク (ニュース)
鉱山で使う機械の修理工場として創業した日立製作所の成長に合わせてまちも拡大、1950年代から80年代まで日立市は人口が県内トップだった。関連産業も集積し国内有数の企業城下町に。1991年には製造品出荷額が1兆6000億円余りと県内で最も多く県全体の14%を占めた。しかし少子高齢化に加えて日立製作所が海外やIT事業を強化する構造改革を進めたことも背景に市内の製造業の事業所数は徐々に減少。人口はピーク時の75%ほどのおよそ16万人になっている。日立市役所では市役所の職員と日立製作所の社員が一緒に向かい合って共同でスマートシティの実現を目指している。まちをいかに存続させるか、市と日立製作所が一緒に解決していこうと始めたのが今回の取り組み。念頭に置くのが脱炭素化、医療介護、交通の3つのテーマ。人口減少を食い止めまちを持続的に成長させるために必要と考えた。脱炭素化の分野では地元の中小企業などへ再生可能エネルギーの導入を推進し地域経済を強化、またオンライン診療などを進め住民の健康を守る。電動キックボードなど次世代モビリティーを導入し移動しやすい公共交通を実現することなどを目標にしている。去年12月に日立市と日立製作所の間で包括連携協定を結ばれると、4月からは市役所に日立製作所の社員5人が常駐した。この日は日立駅前のイベントでアンケートを行った。3日後、アンケートを分析する会議が開かれた。期待する分野を尋ねた結果、最も多かったのは交通渋滞の緩和だった。ただ対応する方策はすぐには出てこず引き続きヒアリングを進めることにしている。地域のさまざまな課題に企業と自治体が協力して取り組むこのプロジェクト。日立市出身で責任者のとく永俊昭副社長に創業地とどのように向き合っていくのか尋ねた。日立製作所によると最終的な目標の達成には10年ほどの時間がかかると見ているが、それまでの間にも数年単位で一定の成果を出していきたいとしている。大手メーカーの持つノウハウと行政、そして市民の問題意識がうまく組み合わさって持続可能なまちづくりにつながっていくのか注目される。