大統領選挙とアメリカの行方

2024年11月19日放送 4:05 - 4:14 NHK総合
視点・論点 (視点・論点)

渡辺将人が「大統領選挙とアメリカの行方」について解説。大統領選挙の結果はトランプ氏の勝利。270万票の差がついた。1988年の選挙戦でデュカキス氏はブッシュ氏に約700万票の差で敗北。1984年の選挙戦でレーガン氏に挑戦したモンデール氏は地元とワシントンでしか選挙人が取れなかった。そしてハリス氏は下院と上院でも民主党が敗北。大統領選挙で民主党が連敗したレーガン政権時代も民主党は下院では多数派勢力だった。次にトランプ氏と本戦で争った過去3名の民主党候補で選挙人と一般投票の双方で敗北したのははじめて。次に民主党の票のいくつかを奪われていること。トランプ氏は中南米系得票率で46%を獲得したが、男性中南米系に絞ると55%と過半数に達している。黒人男性も約2割がトランプ氏を選んだ。女性票でも既婚女性ではトランプ氏が上回っている。両者の勝因・敗因はどこにあったのか。共和党はトランプ氏が元大統領として事実上の現職候補だったこと。また次期政権で厚生長官の起用が発表されているロバート・ケネディ・ジュニア氏も自由市場主義者には人気だった。民主党の最大の問題はハリス氏がバイデン氏の撤退による臨時の代役だったこと。副大統領としてバイデン政権の一員であることも足かせだった。ハリス陣営が力を入れた人工妊娠中絶に関する女性の権利は思うようにいかなかった。出口調査では「ほとんどのケースで中絶が合法であるべき」と考える層で支持が拮抗。またパレスチナのガザ地区におけるイスラエル軍の戦闘も影響を与えた。
アメリカの政治は今後どのように進むのか。改めて浮き彫りになったのは文化的な分断の根深さ。アメリカのデモクラシーファンドの調査はトランプ政権一期目が誕生した時、3つの傾向を指摘。1つは共和党の支持層が経済問題で保護主義になっていること。もう1つは民主党支持層が社会的アイデンティティー問題で一層左に傾いたこと。最後は有権者の3割近くが経済的には左派的でも社会的アイデンティティーでは保守的であること。民主党が抱える問題は文化的なリベラル路線と労働者対策をどう両立させるか。格差是正を訴えるバーニー・サンダース氏は民主党が労働者をないがしろにしたと批判。一方、人種正義を訴えるアレクサンドリア・オカシオ=コルテス氏など若手のアイデンティティー重視のグループとは課題の優先で温度差がある。当面民主党では2年後の中間選挙で下院の多数派奪還を目指しつつ、世代交代の機運が高まるものとみられている。一方、共和党は民主党に責任転嫁はできなくなる。第二次トランプ政権下では労働者の利益にせよ、宗教的な要因にせよ、内製の基準で外交を決めていく外交の内製化を含めた内向きの時代に入っていくものとみられる。


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