時論公論 (時論公論)
高市政権の新たな経済対策が先週閣議決定された。その対策の効果と課題について考える。新たな経済対策は物価高への対応、危機管理投資による強い経済の実現、防衛力と外交力の強化の3つが柱。生活に直結する物価高への対応では、ガソリン税の暫定税率廃止、電気・ガス料金の補助などが盛り込まれた。少数与党のなかで野党の要求も受け入れた面もあり、大盤振る舞いの印象は否めない。また、住む場所や子どものいる・いないで恩恵にバラつきが出る形になっている。
危機管理投資による強い経済の実現について。具体的な投資先としてAI・半導体、造船、量子などをあげ、いずれも経済安全保障に関わる分野として位置づけていて、官民連携で投資を行って日本経済を力強く成長させるとしている。中でも注目したいのが造船。抜本的な強化に向けて10年間の基金を創設、その上で官民が連携して1兆円規模の投資をめざすとしている。国が主導して特定分野に投資を行うねらいは新たな経済成長を促すきっかけづくり。アベノミクスでは成長戦略については十分な効果が出なかった。これに対し、高市政権は責任ある積極財政のもとで国が資金を投入し、それを呼び水に民間を刺激して官民で産業を活性化しようしている。課題は民間がどこまで連携するのか。一方で、国が主導して産業を育てる政策は世界の潮流になっている。まずはラピダスが成功するかが試金石となる。防衛力と外交力の強化では、防衛費・関連経費含め1兆1000億円程度を確保し、2027年度にGDP2%とする目標を今年度中に前倒しする方針。
気になる財源について、経済対策のうち国の一般会計からの支出は17兆7000億円程度で昨年度を大幅に上回る。高市総理大臣は国債発酵額が昨年度を下回る水準になるとして、財政状況に十分配慮していると説明している。ただ、財政悪化への懸念が根強く国債を売る動きが広がっていて、長期金利が一時1.8%台まで上昇、円安も進んでいる。また、物価高対策によって消費が活発になり、かえって物価を押し上げるのではという見方もある。日中関係の関係悪化が長引けば日本経済への悪影響も心配される。懸念を払拭し、本当に強い経済を実現できるのか高市政権の実力が問われることになる。
