- 出演者
- 三條雅幸
ノーベル生理学・医学賞に選ばれた坂口志文氏、ノーベル化学賞に選ばれた北川進氏の言葉から偉業に迫る。
ノーベル生理学・医学賞に選ばれた坂口志文氏がスタジオ出演。坂口氏はノーベル化学賞を受賞した北川進氏と同じ1951年の生まれで、ともに関西出身。同じ時期に京都大学で学んでいた。VTRで出演した北川氏は健康の秘訣について質問し、坂口氏は十分な睡眠をとることと答えた。
安土記者が坂口氏の研究について解説。免疫が暴走して正常な細胞を傷つけるときに、制御性T細胞が免疫反応の暴走を抑えるブレーキ役となる。発見された当初は免疫を抑える免疫細胞は存在しないと言われていたが、存在が証明されると常識を覆す大発見と評価された。坂口氏は、免疫反応が抑えられているときに制御性T細胞を取り除くとがんや慢性的な感染症を治すことにつながる、制御性T細胞を増やしてアレルギー反応や臓器移植の拒絶を抑えることも可能になると話した。
大阪大学と大手製薬会社のグループは、注射1本でがんが治る世界を目指して研究を進めている。がんが進行してがん組織の中で制御性T細胞が異常に増えると、免疫ががんに働きにくくなる。制御性T細胞を減らすことでがんを排除できることはわかっていたが、他の正常な組織にある制御性T細胞も減らし自己免疫疾患を引き起こすことが課題になっていた。グループが開発している薬は、がん組織の中にある制御性T細胞が持つ特定のたんぱく質に反応。このたんぱく質を持つ制御性T細胞だけを取り除くことで、免疫が活性化しがんが消失するとしている。製薬会社を実際のがん患者に投与して効果や安全性を調べる治験を進めている。
坂口氏は制御性T細胞の存在を示す論文を1985年に発表したが、10年ほど研究成果が注目されない時期が続いた。坂口氏は、自分たちの考え方が間違っていないだろうということと生来楽天的なので淡々と仕事を進めていた、試行錯誤するうちに自分の考え方に自信ができて少しずつ周りも認めてくれると話した。妻の教子さんは「論文が落ちても毎日実験をして新しいデータ、面白いデータがあるとワクワクしてその積み重ねでここまできた」と話している。
ノーベル化学賞に選ばれた北川進氏の研究を齋藤記者が解説。北川氏が開発した多孔性金属錯体は多くの小さな穴が空いた材料で、穴にはまる気体だけを取り込むことができる。穴の大きさは自由に変えることができ、欲しい気体だけを狙い撃ちすることが可能。消臭剤の場合は、においの原因になる物質を狙い撃ちしてにおいを吸い取る。有毒ガスを材料にためて安全に運ぶことが実際に行われている。将来的には砂漠の空気から水を集めたり温室効果ガスを吸収したりと、環境問題の解決に貢献することにも期待されている。
近畿大学で研究生活をともにしていた恩師と教え子に話を聞いた。北川氏には「ナンデヤー」というあだ名があり、わからないことにこそ面白さを感じる人だという。インタビューで北川氏は、変わった考え方が大好き、自分と違う分野に行くと言葉もわからず知り合いもいないため孤独感がある、そういう時こそ新しい意見や考え方が出てくると話した。
坂口氏と北川氏はともに研究環境の課題について指摘している。坂口氏は、基礎科学に対する支援が不足している、免疫学の分野では研究資金の規模がドイツの3分の1と指摘している。北川氏は、若い人の研究時間を確保する政策が必要と指摘している。坂口氏は、大学や研究機関にコストをかけることで科学を次の世代に伝えることが可能になる、優秀な若い人たちのアイデアを長期的な視野で育てていく支援が不足している、論理的に考えることは科学だけでなく社会を考える場合にも重要、深刻に思えることもあとから考えるとそれほどでもないこともあるので楽天的であることが大事と話した。
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