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「世界の平均気温の上昇を産業革命以前に比べて1.5℃に抑える」ために国内メディアが集結し力を合わせ新たな取組をはじめる。そんな大きな一方を昨年踏み出した。でもそれ以上のスピードで気候変動は進んでおり、温室効果ガスを減らすアクションを日本の人に、企業に、自治体に、政府に取り組んでもらうため何が必要か?1.5℃の約束。
オープニング映像。2021年10月、ノーベル物理学賞が気候変動で真鍋淑郎博士などに異例の研究に授与されることが発表された。真鍋さんの予見どおり今地球の気温が急速に上昇、異変が生じ始めている。それにともない深刻な自然災害が世界で頻発している。気候変動研究の第1人者はさらなる温暖化を引き起こすと指摘している。この先地球はどこへ向かうのか?温暖化が限界をこえたときに地球はホットハウス・アースというステージになるという。そうした中、危機を回避する取り組みも始まっている。人類は叡智をいかし温暖化を食い止めることができるのか?地球の存亡をかけた人類の選択に迫る。
2021年8月、グリーンランドである異変がおきた。グリーンランドの標高3200メートルにある研究施設で史上始めて雨が観測された。雨は氷を溶かし氷河の下の地面で川となり海に流れ込む。この水の流れが氷河を溶かし例年の7倍もの氷が海に溶け出した。一方、その裏側の南極でも2020年2月、観測史上最高となる摂氏18.3度が記録された。重力を測定するNASAの人工衛星「GRACE-FO」がとらえたのはグリーンランドの氷の量が多く失われていることを示し、南極でも同じことがおこっていた。極地の氷が失われた場合、地表や大気の温度を下げる機能や、熱や湿度を平準化する機能などが不安定となるという。2021年8月、IPCCが発表した評価報告書によると、このままでは温暖化が後戻りできない段階に突入することが警告されている。気候システムの一部領域では温暖化はすでに手遅れの段階に進んでいると警鐘をならす気候変動研究の第一人者がいる。それはポツダム気候影響研究所のヨハン・ロックストローム博士。博士は2009年、世界の著名な科学者と共同で“惑星地球の限界”という概念を打ち出し、温暖化が惑星の限界を超え悪化すると地球の自己調節機能が失われ温暖化が温暖化をよぶ悪循環に陥り長く続くという。グリーンランドの氷が溶けることで海水温が上昇、それがグリーンランドに再び影響し氷がさらに消失しさらなる海水温の上昇につながる。大西洋での温暖化はアマゾンの熱帯雨林に波及し降水量がへり森林化が現象し二酸化炭素の吸収量がおち温暖化がさらにすすみ、太平洋に影響し海水温が上昇し南極大陸の温暖化につながるなど地球はすべて連動しており、一部が悪化すると波及するという。こうした連鎖反応のを模式化したものでは、温室効果ガスの排出が続けば今後温暖化が加速し酷暑の時代に入るという。温室効果ガスの排出をいつまでにどの程度抑えるのか、世界各国の首脳があつまり国際会議が行われたが、石炭発電廃止の合意を得ることはできなかった。国際会議を前に、国連は警鐘をならしている。
「ホットハウスアース」という最悪のシナリオを回避する手がかりを、地球45億年の歴史に求めようとする研究者がいる。東京大学大気海洋研究所の横山祐典教授によると、岩に残された化石を持ち帰り年代を分析することで、その時代の海水面を特定でき、地球の気候の変化を割り出すことができるという。地球は、離心率の変化・自転軸の傾き・歳差運動の変動により太陽の光の当たり方が変わり、周期が重なると大規模な気候変動になることもあり、それが氷期・間氷期が繰り返される要因となっている。横山教授によると、数万年単位で繰り返されてきた気候変動サイクルに異変が生じているという。温暖化の暴走を警告したロックストローム博士の論文タイトルにもなっていた「人新世」とは、後の地質に人類の環境破壊の刻印が残り、未来の世代に爪痕が残されることを言う。人類学者の竹村眞一教授は、人新世の地球を宇宙からの視点で直感的に捉えるメディアを開発した。温室効果ガスの排出がこのまま増え続けると、2100年には地球の温度が3.6度上昇するホットハウスアースが起きるという。
青森県・秋田県にまたがる白神山地には、天然のブナの森が残されている。森にある巨木は、400年以上の樹齢とみられ、日本の巨木百選にも選ばれている。白神山地は周辺山地の貴重な水源となっている。森が蓄えた水は湧き水となり、山を下り麓の里に潤いをもたらしてきたという。
暴走する温暖化のメカニズムを、他の惑星から学ぼうという動きが始まっている。新たに任命されたNASAのネルソン長官は、約半世紀ぶりに、金星に探査機を送り込むプロジェクトを発表した。生命を育む環境がかつて金星にもあったのか、それを明らかにするのが目的となる。金星は地球や火星と同じ岩石で出来た惑星で、太陽系の中で地球と最も近い惑星だが、表面は摂氏460度の灼熱地獄となっている。金星がホットハウスヴィーナスであることが初めてわかったのは、1960年代のマリナー計画による一連の探査だった。それにより、地球の100倍近い分厚い大気で覆われており、その95%以上が二酸化炭素だった。NASAの惑星探査に大きく関わった学者のカール・セーガンは、金星で起こった暴走的な温暖化が地球にも起こる、いわば警告ではないかと考えたという。その一方で、NASAエイムズ研究センターのクリス・マッケイ博士は、暴走的な温暖化を人為的に起こせば不毛の惑星を緑あふれる環境にすることもできるという型破りなアイディアを提唱している。火星はある意味金星とは正反対の惑星で、大気のほとんどが二酸化炭素だが、地球の100分の1ほどしかないという。大気が極端に薄いため、太陽から届いた熱を閉じ込めることができず、表面の温度は摂氏-60度を下回っている。その火星で、温室効果ガスを人工的に排出し、地球から生命を持ち込み緑あふれる惑星に変えるという。また、地球では、大気を大規模に操作し温暖化を食い止める方法が研究されている。地球に降り注ぐ太陽のエネルギーをコントロールする「ジオエンジニアリング」には、地域によって降水量が変化するなどの予期せぬ副反応も指摘されており、マッケイ博士は問題を根本的に解決するまでの時間稼ぎに過ぎないと指摘している。
地球は化石燃料に過度に依存しているが、現代社会のライフスタイルを根本的にリセットする必要性に迫られている。アメリカのTAEテクノロジーズ社は、太陽がエネルギーを生成する仕組みを地上で再現する核融合技術を使い、核融合エネルギーを電力に変換し、企業や家庭に送電する計画をしている。核融合エネルギーは、発電効率と安全性において、原子力に使われる核分裂エネルギーを遥かに凌駕するという。一方、日本では、生命がエネルギーを生み出す仕組みを模倣し、カーボンニュートラルを目指す試みが始まっている。豊田中央研究所では、太陽の光と二酸化炭素を光合成によりエネルギーに変え、人工的に再現するという実験を続けている。開発を提案した当初は懐疑的な意見が多かったが、まず1cm角の小さな装置で人工光合成が可能であることを証明し、試行錯誤を繰り返し大型の装置で植物を大きく上回る変換効率の達成に成功した。これは、排出量削減とエネルギー問題を一気に解決する技術となる。さらに、微生物を活用し、排出量削減と経済活動の両立を目指すベンジャービジネスも本格的に動き始めているという。日本の温泉で発見された水素菌は、極めて早いスピードで増殖し、無機物だけで有機物を生み出すという。
秋田白神ガイド協会の斎藤栄作美さんは「森は巨大な生き物だと思っています。森をなくして、私達は生きられないと常に思います」、京都芸術大学の竹村眞一教授は「発見されていない動物、微生物、ウイルスなどでパートナーシップを作って、未来を作っていきたい」などと話した。エンディング。