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堀島行真はスキーフリースタイルモーグルで日本のエース。世界選手権で3度の金メダル、ワールドカップは通算24勝と表彰台に立ち続ける堀島。目前に迫るミラノ・コルティナオリンピックで日本男子初の金メダル獲得を狙う。オリンピックの会場と時差のない環境で練習するためヨーロッパへ移住。モーグル用のコースをオーダーメイド。金メダルに描ける執念は周囲の度肝を抜く。しかし、過去2回の五輪では挫折を経験した。頂点に立つため全ての不安を潰せるのか、堀島の挑戦に密着した。
オープニング映像。
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ノルウェー・オスロが堀島の現在の拠点。日本の企業と契約を結びサポートを受けて滞在。室内スキー場では自身でスマホをセットして撮影し全ての動きを確認している。オリンピックが数カ月後に迫るなか、1人飛び続け淡々と練習を進めていく。
堀島は岐阜県で産まれ、スキーを始めたのは1歳の頃。次第にモーグルに興味を持った。少年時代のコーチは当時の堀島について「今も子どもたちを見るんですけど、やはり身体能力だけで言ったら行真が一番トップかなと思ってます。高校もしくは大学生でたぶんもう日本のトップにいってるんで、堀島には誰も教えられる人が日本にはいない。当時は思ってました」と当時を振り返った。また、身近なスタッフも日々が驚きの連続だと言う。
練習を終えた堀島はノートに向かっていた。中学生の頃から続けているという書く習慣。書くことで自分自身と対話する。モーグルは立った1人で滑る孤独な競技だからこそ自分にかける言葉が必要なのだという。内なる戦いの痕跡をノートだけが知っている。遡るとネガティブな記述があった。2018年に初めて出場したピョンチャン五輪直後のもの。当時、金メダルを期待されていた。しかし、決勝のスタートラインに立った時、堀島の気持ちを支配していたのは不安だった。結果は11位。少年の頃から目指してきた大舞台で見たのは想像とは程遠い自分の姿。現実が堀島の心を蝕んでいった。堀島を襲った気持ちの揺れ。モーグル元日本代表の上村愛子は「みんなに好かれる弟分みたいなところがあったが、一気に周りがライバルになってしまい、自分に向き合うより周りに対して勝たなきゃってどこか不安というか怖くなるんです。そういう感覚でピョンチャンではなっていたのかな」と話した。一度は沈んだ堀島の心だったが、不安の連鎖から抜け出すため向き合ったのは客観的な事実。一つ一つの結果を数字で確かめていった。結果のみを見つめて歩みを振り返ると不安が薄らいでいく。数字を盾に望んだ北京五輪。金メダルには届かなかったが初めて表彰台に立った。北京後、技術面の不安の要因だった第1エアーの改善に取り組んだ。徹底的な反復練習で完成度を上げていく。緻密に計算することで自分に安心を与える。上手くできた時の力の入れ方は図に残し些細な感覚すらも客観的に記録。ノートは堀島行真のマニュアルに変わっていった。新たな技をモノにしたことで勝利のスタイルを確立した。
3回目のオリンピックとなるミラノ・コルティナの舞台に向けて、堀島は不安をすべて取り除くための決断をした。まず求めたのは、オリンピックの本番と地続きの環境だった。2023年夏、開催地イタリアと時差のないノルウェーへ移住した。首都・オスロに程近い世界最大級の室内スキー場を練習拠点にした。拠点を移してから考えにも変化が生じた。家族揃っての移住。選手として過ごす以外の時間が自然に増えていった。競技から離れる時間がやがてアスリートとしての力にもなるという気づきがあった。ある日、スキー場のスタッフに自ら交渉し、閉館後の室内練習場に堀島専用のモーグルのコースを作った。ノルウェーに帯同しているトレーナーに体のケアをしてもらうだけでなく、不安を相談をするようになった。そして堀島は周囲への気遣いをこれまで以上に欠かさないようになった。
オリンピックまで3カ月。シーズン前の最終調整。普段は1人で練習している堀島がモーグル会のレジェンドのヤンネ・ラハテラに自分を見てもらった。オリンピックを前に堀島が練習への合流を頼んだ。ライバルたちが一発勝負を仕掛けてくる可能性も高いため、さらに上に行くための切り札が必要となる。感覚ではなく審判の客観的な視点で自分自身を捉える。1人んでは困難なことでも堀島には頼れる仲間がいる。チームの強い意志が完成度を押し上げていく。
装いも新たにスキー場にやってきた堀島。大会で着用するウェアを着ての練習。チームの期待を背負い渾身のジャパングラブを披露し見事に成功。信頼する仲間の視点を借りて、不安を取り除くための最強の武器を手に入れた。翌月迎えたワールドカップ開幕戦。ジャパングラブは温存しながら迫力のある滑りで見事優勝。その後も表彰台に立ち続け、総合成績トップでいよいよオリンピックに臨む。ミラノ・コルティナオリンピックの1度の滑りにすべてを懸け、今スタートラインに立つ。
