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オープニング映像。
東部浅草駅にやってきた田中卓志が乗るのは東武鉄道の特急スペーシアX。現代アートの彫刻を思わせる滑らかな流線型で、運転席は硝子に覆われ未来の乗り物のよう。真っ白な車体すら神々しさを感じさせる。その日光までは1時間50分ほどの旅。スカイツリーの麓を6両編成の車両が通りぬけ浅草から東武日光と鬼怒川温泉を結ぶ。田中は車内を散策。個室は陰影のきいたゆったりとした部屋でベンガラ色の壁で上質な質感のテーブルと椅子がある。景色に趣を添えるのは六角形の窓。スペーシアXをデザインしたのは日立製作所の高田裕一郎さん。そのデザインチームは誰もが知る鉄道や地下鉄などを設計してきた。高田さんはスペーシアXのコンセプトに大事なものを包み込むようなデザインにしたいと手作業でかごを編んだ時のような美しさを取り入れたかったという。
スペーシアXの窓が六角形な理由は新鹿沼駅に秘密がある。その街にある吉原木芸では特産品の伝統工芸品の鹿沼組子を手掛ているが、電車の内部にはふすまや障子にあしらわれ、贅沢な空間を演出する。この六角形は亀甲を表しとても縁起が良い。窓の形に沿線で育まれた江戸文化へのリスペクトが表れている。また電車には日光の美もあるという。春日部駅で下車し、停車中のスペーシアXで探ってみる。
スペーシアXに秘められた日光の美をみてとれるのがラウンジになった車両。座席は固定しておらず、普通の部屋のように丁度品がおかれる。全て特注し、この空間デザインは日光の歴史的な建物をモチーフにしているが、日光金谷ホテルは現存する日本最古のリゾートホテルで明治6年創業。回転扉を開けて中に入るとレトロモダンな香りが漂う。絨毯は高貴な人しか身に着けられなかった深緋。そこに重厚な丁度品が匠にレイアウトされている。そのクラシカルなデザインを列車へ投影した。またスペーシアXの最高の空間は走るスイートルームな部屋が。7人までの貸し切り車両で一月前から予約で埋まっている。テーブルは大理石の特注品で六角形の窓が3つ連なり外の景色がよくみえる。
スペーシアXは日光へ。その車内には江戸の美がたくさん隠されている。新幹線で言えばグリーン席のプレミアムシートは明るい茶色が目印。最も座席数の多い一般席は、落ち着いたグレーで統一。パーテーションで仕切られたボックスシートは薄いブルー。全部で6種類ある座席は全て異なる色に。高田さんは四十八茶百鼠から色を選んだと語るが、江戸時代中頃は大地震や大火事で幕府の財政は逼迫し、将軍の徳川吉宗は自ら質素な着物を身に着けて質素倹約を率先した。そして庶民にも贅沢禁止のお触れが通達され着物の色まで制限された。その中で許されたのは茶色と藍色と鼠色の三色。しかし江戸っ子は灰色がかった茶色や赤みがかった鼠色など、定められた色から新しい色を生み出し、四十八茶百鼠と呼ばれるようになったという。スペーシアXにはスタンダードには基本の鼠色を使用し、プレミアムシートは茶に金をまぜた金茶。ボックスシートは薄い藍色。豪華なラウンジ席は四十八茶百鼠をベースに金谷ホテルの高貴な色をわせている。また車体の白い色にも江戸の心がある。
スペーシアXの車内には倶利紋と呼ばれる伝統工芸にも用いられる獣の顔のような紋様が施され、魔除けの意味合いがある。しかし一箇所だけ逆を向いている部分があり、カフェカウンターの一箇所だけ模様が逆さまになっている。その秘密は日光にあるという。また車体の白にも深い意味があるが電車は日光へ到着。駅から車で10分の場所にある世界遺産の日光東照宮は、創建1617年で亡くなった徳川家康を神と祀るために建てられた。日本で最も美しいと言われる陽明門は伝説の彫師の左甚五郎作と言われる眠り猫などがあしらわれ、その美しい社はスペーシアXのデザインの原点になっている。田中は陽明門の柱に着目したが、その柱は白。帆立や牡蠣などの貝で作られた日本古来の顔料の胡粉が使用され落ち着きがありな柄透明にも引き立つ白。高田さんは金色の飾りと合わせると白が引き立つ仕掛けになっていると語り、陽明門の装飾とあわせてみるとわずかに青みがかって見えるという。その神がかった様子をスペーシアXに転用するために青みがかった白の車体にしその美しさを引き立てたという。
スペーシアXの車内には倶利紋と呼ばれる伝統工芸にも用いられる獣の顔のような紋様があしらわれているが、一箇所だけその模様が逆さまに施されている。その秘密は陽明門にあり、建物を支える12本の柱に施された倶利紋は一本だけ模様が逆さまになっている。完全なものはいつか壊れるという、盛者必衰の世にあえて完璧ではない部分を作った。当時の江戸幕府は家康を祀るこの神域が永遠に続くようにと願をかけていた。スペーシアXにもいつまでも長く活躍してほしいという思いが込められている。
新美の巨人たちの次回予告。
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