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京都で今人気を集めている展覧会は現代美術家村上隆の展覧会が開催ルイ・ヴィトン。秋山竜次がその村上隆の作品に迫る。
オープニング映像。
展覧会村上隆 もののけ 京都の背景の絵には村上作品の楽しみ方のヒントがあるという。その絵の中には小さくポップばキャラが描かれるなど細部にまでこだわっていて近づいてよく見てみると新たな発見ができる。また洛中洛外図屏風 岩佐又兵衛 ripは江戸時代の京都の町を描いた洛中洛外図の村上版。金色の雲にはその全てに凹凸をつけたドクロが描かれている。これも目を凝らした人だけが気づく細部へのこだわり。生と死が今よりも身近だった京都の空気感を蘇らせた展覧会になっている。
展覧会村上隆 もののけ 京都には目玉作品がある。風神雷神図屏風といえばよく知られている有名な作品だが今日の作品は村上隆が手掛けた風神図、雷神図。カラフルな雲の上に立っているのは、ヒョロヒョロの白い体をした雷神。カジュアルな太鼓を背にして一生懸命に稲妻を起こそうとしている。稲光も実にファンシーな色使い。その対となるのが風神。雲の上にぽっちゃり体型でふてぶてしささえ感じさせる風神が長い息をふきかける。雲はカラフルの迷彩で輪郭線も単一ではなく細かすぎる彩色が施されている。
秋山もその作品に皆が知っている作品をここまで変えてしまうのは凄いと感心した。
村上隆さんは1962年に板橋区に生まれ幼い頃からマンガやアニメが大好きだった。東京芸術大学の日本画家に進学。指導教授は平山郁夫などの巨匠たち。31歳の時に日本画家博士号を取得。30代はコンビニで賞味期限切れのお弁当をもらってくるほど経済的に困窮する時期も。転機になったのは38歳。村上さんは新しい芸術概念を提唱した。それはスーパーフラット。これは印象派やキュピズムと並ぶ新しい芸術概念&芸術運動。日本の絵には西洋絵画のような遠近法がなく、奥行きのない2次元平面で表現されてきた歴史がある。それを村上隆はスーパーフラットと呼び日本の社会や文化までも指し示す言葉として提唱。これが世界進出への足がかりに。今日の作品にもスーパーフラット理論に基づく構図や描き方がみてとれる。
「風神図」「雷神図」は視線の誘導を使っているという。江戸時代の絵師の狩野山雪の作品の梅遊禽図梅は幹が上がって下がって再びあがるという面白い構図になっている。村上隆はこの例をとって鑑賞者の視線の動きがどのように誘導されるのかを解説している。画面に奥行きはないが独特の視線誘導の遊びがあり欧米のアートコレクターにも受け入れられると村上は築いた。伝統絵画から学び鑑賞者の視線をぐるぐると遊びこうした独自の手法があった。
「風神図」「雷神図」のスーパーフラットな描き方を紹介。この作品はシルクスクリーンなどを使いながら丁寧に描かれる。最後にコーティング剤で仕上げていてプリントアウトしステッカーを貼ったようにみえる。それが村上の狙いで、京セラ美術館の高橋さんはオリジナリティで現代的な手法だというゆるキャラに描くことで凄みを逆に魅せているという。アニメのセル画を貼り付けたような質感でそこにこだわって描いている。西洋のアートシーンで成功し、現在は160名ものスタッフを率いて工房で制作を行う。
村上隆が書いたスーパーフラットに関する書籍ではある本からの影響をみてとることができる。辻惟雄著書の奇想の系譜は1970年に日本美術史家の辻惟雄が発表しその後の美術界を一変させた書物。現代の伊藤若冲ブームもこの本で紹介されたことがきっかけ。村上にとって辻惟雄は自ら提唱したスーパーフラットの理論的支柱で師匠と呼んで慕っている。2人の関係は2009年からの2年間で急速に深まった。雑誌の誌面で一緒に連載を持つことになった。辻惟雄がお題の文書を書き、村上隆がそれに対し絵で答える。日本の名画のエッセンスを引き継ぎながらまだ誰もみたことがないビジュアルを展開。以後この制作スタイルは村上作品の一ジャンルとして定着していく。辻惟雄からのお題は奇想の絵師の曽我蕭白が描いた雲龍図。村上はそれに対して絵で答えなければいけなかったが辻惟雄に言われた言葉を根に持っていたというが、辻にアシスタントばかりに絵を描かせて怠慢だと言われたという。こうして雲竜赤変図《辻惟雄先生に「あなた、たまには自分で描いたらどうなの?」と嫌味を言われて腹が立って自分で描いたバージョン》という作品が出来上がった。辻惟雄はアーティストは人の意見を聞かない人も多いが彼にもそういった所はあるが、自分が共感したものに対しては無にして受け入れてくれるような所があり素直で率直だという。秋山は今日の作品の「風神図」「雷神図」についても村上隆と辻惟雄のような関係性が見えてくると答えた。
村上隆が秋山の前に登場した。村上は秋山と顔が似ていることに鏡を見ているようだと秋山に伝えた。
秋山は村上に何故被り物をするのか?と質問。村上は海外で活動する際に自分が攻撃的な人間ではないという証明をするためにだという。西洋で認められるための戦略だという。
「風神図」「雷神図」に視線誘導を入れた理由に村上は1枚1枚の作品の価格が高額でその高額な価格を投じて購入してくれる人に対し骨の髄まで作品を味わってほしいという思いがあり、一枚の絵にはいろいろな仕掛けを施すようにしているという。
風神雷神でこだわった所に村上は当初雲は真っ黒だったが黒にしてしまうと真面目過ぎたのでそこは絵の具が分厚くなっていて、何十回も塗り直したという。その作業だけで2ヶ月はっかったという。
しかしそうした細かいことよりも風神雷神をゆるキャラとして描いたことに意味があるという。村上は未来の人がこの作品を見て日本人はこの時代にダレていたと言うことが一目瞭然だと答えた。また制作過程の苦労を微塵に感じさせたくないと未来人にも楽しんでもらえるようにと考えている。
「新美の巨人たち」の次回予告。
「スポーツ リアライブ」の番組宣伝。