- 出演者
- 加藤大和
今月全国的な猛暑が一転し、九州や北陸を中心に線状降水帯が発生するなど大雨となった。川から溢れた濁流が襲い、崩れた土砂が住宅へ流れ込んだ。熊本県や鹿児島県などで8人が死亡し、8000棟近い建物が浸水などの被害を受け今も市民生活に影響が出ている。日本付近は太平洋高気圧に覆われて、今月始めにかけては最高気温が38℃を超える危険な暑さとなる地点も相次いだ。最高気温の歴代ランキングの上位5つはいずれも今年に更新された。ところがその後、日本列島を覆っていた高気圧が南へ後退し日本付近には前線ができて7月の梅雨末期に似たような戻り梅雨と呼ばれる気圧配置となった。大雨の特別警報が発表された鹿児島県や熊本県などを中心に、非常に活発な雨雲がかかり続けて各地で線状降水帯が発生した。降った雨などで内水氾濫が相次ぎ、住宅や農地などが広範囲で水に浸かった他各地で土砂災害が発生して死者も出ている。九州ではわずか半日に降った雨の量が平年の8月1か月分の1.5から2倍の記録的大雨となった。川村隆一教授は「日本付近で集積した大量の水蒸気」と「8月の海面水温の高さ」を指摘する。戻り梅雨が発生していたとき、日本付近には雨を降らせる雲の元となる水蒸気がインド洋・南シナ海から中国大陸を経由して流れ込んでいた。一方、太平洋高気圧の縁を回る別の湿った空気も加わり合流した大量の水蒸気が日本付近に流れ込んでいた。そこで前線が発生し、南に高気圧があって日本付近に前線がのびるまさに梅雨末期の状態である。
記録的大雨となったもう1つの注目点は雨量を増やしたとみられる海面水温である。8月は海面水温が3℃程度高くなっていたことがわかる。さらに猛暑による”海洋熱波”で水蒸気が増え、記録的大雨となる可能性もあるという。台風の接近で水蒸気の流入が強まるおそれがあり、太平洋高気圧の縁を回る湿った空気に加えて台風からも湿った空気が大量に送られる。世界気象機関の報告書によると、アジアでは世界平均2倍の速さで温暖化が進んでいると指摘されている。日本の平均気温上昇率は100年あたりで1.4℃で、世界平均の上昇率0.77℃と比べて大きくなっている。今月の大雨で被害を受けた九州などでは、川の護岸や橋が壊れている他川底には土砂が貯まって水を流す能力が下がっているところがある。また崩れた斜面には今も土砂や流木が川や斜面に残り不安定に残っており、応急対応進んでいるが復旧に時間がかかっているという。静岡大学・牛山素行教授によると、人的被害を伴う土砂災害の9割近くが土砂災害警戒区域で発生し浸水被害は約半分が想定区域で発生しているとのこと。まずはハザードマップを調べて地域の危険性や過去の災害を把握する必要があるという。中小河川や崖などはマップに色づけなくても災害危険性があり、安全だと考えるのは早計である。そのため「災害リスクを知りどう行動するか考えておき、知識や対応の”引き出し”がいくつもあれば災害時も対処できる」とのことだった。
エンディング映像が流れた。