- 出演者
- 渡邊佐和子 佐藤二朗 河合敦
今回、清少納言が残した「枕草子」を調査する。清少納言は「大河ドラマ 光る君へ」に登場し、ファーストサマーウイカが演じている。
オープニング映像。
今回、清少納言の代表作「枕草子」を調査する。加藤向陽アナウンサーは高校時代に愛読したといい、「枕草子への愛は強いので」と語った。清少納言は一条天皇の后、藤原定子に仕え、「枕草子」では宮中で体験した心情、出来事を綴っている。
相愛大学の図書館では清少納言の史料を所蔵し、その中には枕草子の写本もある。江戸時代の写本は藤原定家が鎌倉時代に書き写したものをベースとし、清少納言の原文に最も近いとされる。京都の地理、歴史に詳しい梅林秀行氏は平安時代に御所があった場所へ案内し、清少納言が仕えた藤原定子の住まい、登華殿の跡地は介護施設になっていた。「枕草子」の冒頭、春はあけぼのとあるが、あけぼのは地平線がうっすらと見える時間帯「航海薄明」、街が明るくなる時間「常用薄明」の間と考えられる。他にも「ほそくたなびく雲」と記され、気象予報士の吉村晋弥氏によると、かなり難しい気象条件だという。
3月8日5時、加藤アナ、吉村晋弥氏は船岡山にて、枕草子の冒頭「春はあけぼの」の撮影に挑んだ。空の青に朝日の赤みが混ざり、たなびく雲は紫色に染まった。
スタッフによる奮闘の結果、枕草子の冒頭「春は、あけぼの。やうやうしろくなりゆく山やまぎは、すこし明あかりて、紫むらさきだちたる雲くもの、細ほそくたなびきたる」の景色を収めることに成功。平安時代を代表する歌人は春の歌で桜、梅、うぐいすなどを使っているが、春とあけぼのを組み合わせた清少納言は一線を画するという。また、河合敦氏は「枕草子は順番がバラバラ。晩年のことが最初の方に出てきたり、初めての宮仕えが中盤以降に登場したり。極めて珍しい形の本」と語った。
佐藤健一氏のもと、10万字を超える「枕草子」の全文を解析した。形容詞が多く、赤間恵都子さんは「女流文学が盛んになってから一気に増えた」と話す。分析の結果、曖昧な表現はなく、いいか、悪いかをはっきり綴っていたようで、殊に「をかし」、「めでたし」の使用頻度は多い。また、清少納言は仕えた藤原定子、兄である伊尹のやり取りに感嘆したとも綴っていて、「枕草子」を通して日常生活でも巧みに知識・教養を使う藤原定子をアピールしていた。
「めでたし」は最上級の褒め言葉で、清少納言は藤原定子の衣装を絶賛する際に「めでたし」と使っていた。「大河ドラマ 光る君」に出演した野呂佳代は十二単を試着させてもらった。儀式、高い身分が人に会う時に着る正装で、9枚前後が一般的。総重量は17kgにのぼる。
河合敦氏によると、藤原定子は漢詩、和歌に精通し、天皇や貴族たちとも教養のある会話を交わしていた。また、初めての宮仕えに緊張する清少納言に定子は温かく接したといい、清少納言からすれば、主人というよりも恩人と認識していたと考えられるという。「枕草子」には「紫だちたる雲」という表現があるが、紫雲は天皇家、中宮を指している。定子が姿を見せることで世の中が明るく照らし出されるという描写かもしれないという。
「紫式部日記」において、清少納言に対する評価は手厳しく、成れの果ては転落とも断言している。大河ドラマで秋山竜次演じる藤原実資が残した日記によると、藤原定子の父が亡くなった翌年、実兄が太宰府に左遷される。定子は宮中を出る他なく、たどり着いた邸宅は格式が低かった。定子が中宮であることを考えると、前代未聞の事態だったという。「枕草子」には定子の没落に関する記述はないが、没落の前と後とで使われる形容詞に変化がある。没落後、「めでたし」という褒め言葉はめっきり使われなくなり、「をかし」を使用。没落しても定子の変わらない優しさ、思いやりを称えたという。その後、「枕草子」は宮中で評判に。紫式部は定子の辛さに触れない清少納言を現実的ではない、強がっているだけと批判した。そこには嫉妬も含まれていたのかもしれないという。
紫式部が宮仕えしていたのは藤原彰子で、定子に代わって一条天皇の中宮となった。定子は故人だったが、サロンは評判で、「枕草子」が要因だったのかもしれない。紫式部は彰子のサロンの代表者として、枕草子を反論した可能性があるという。なお、清少納言は穏やかな晩年を過ごしたとされる。
「歴史探偵」の次回予告。