- 出演者
- 市川紗椰
中標津町にある老舗旅館「湯宿だいいち」は人手不足が課題となっていた。ある日本企業の製品はヨーロッパで売れていた。縮小国内市場から海外へ日本企業が世界で戦う秘訣とは。
オープニング映像。
外国人労働者は去年初めて200万人を突破したと言われる。2月、大阪・中央区では関西エリアの企業が集まって就職説明会が開かれた。企業の担当者からは「受け入れられるともっとお知らせしないと母国に帰ってしまう」「勤勉な人が多いのでもっと拡大していきたい」と言った声が聞かれた。北海道・中標津町「湯宿だいいち」では従業員50人のうち15人が外国人。スタッフの多くが3カ国以上を話せるためインバウンド客に対応できる。宿では同じ国の出身者を複数人採用し孤立させないようにしていた。さらに日本人従業員が積極的に歩み寄って仕事を教えている。常時8種類以上のまかないを用意し、食事などを通してお互いの文化を知るようにしている。
市川は池袋にあるグローバルトラストネットワークスを訪ね、代表の後藤さんに話を聞いた。従業員は外国人が全体の70%以上で、20カ国以上から来日している。在日外国人に特化してサポートサービスを提供している。韓国人社員のイさんは外国人だから部屋を貸せないと言われて断られることが多く最初に借りるまで1カ月かかったと話した。保証人制度が外国人にとってハードルになっていた。後藤さんの起業のきっかけも保証人制度で、困っている外国人を目の当たりにしたことから2006年に会社を立ち上げた。新大久保の店舗には様々な国の人が相談に訪れ、外国人専用の携帯サービスも始めた。不動産の斡旋やクレジットカードなどの悩みもサポートしている。
日本は長期滞在ビザだけでも大きく分けて7種類あり、就業ビザ一つをとってもさらに細分化されている。後藤さんは入れたくてもビザの関係で入れれないと悩みを抱えている企業もあると話した。
人材紹介会社Diveで外国人部門を担当する大類さんに密着。特定技能ビザで働く人には国から認定を受けた機関が面談を行い入管に報告書を提出することが義務付けられている。大類さんは全国40カ所約100人を担当している。大類さんは日本で働くことを希望している人たちへのリモート説明会を行った。画面の向こうの宿泊の特定技能の試験にパスしたネパール人に向けて日本独特の旅館についての説明などをした。毎回名前の読み方に苦労しているという。大類さんは留学時代に原点があり、不安や孤独がわかるからこそ親身にサポートしている。大類さんは箱根のホテルで営業をしたが、ホテル側は採用にまだ迷いがあるようだった。雇う側と外国人双方の不安を解消するのも大類さんの仕事。大類さんは初来日したミャンマー出身のジンさんの勤務先「こんぴら温泉 湯元 八千代」まで着任同行した。ジンさんの仕事は旅館の食事担当。寮も併設されており、旅館で生活しながら働く。大類さんはスーパーの買い物や銀行口座の開設などを手伝った。
後藤さんは外国人が来ないとなると日本経済は大変なことになると話した。2040年までに外国人労働者を674万人まで増やさないとGDPを維持できないというJICAの試算もある。世界的には人口爆発が社会課題で、2058年になると世界人口は100億人を超えると言われている。後藤さんは日本人の意識を変えなきゃいけない、フェアに採用するという意識変革が求められているなどと話した。
オランダではある日本企業の製品が売れている。
- キーワード
- オランダ
新潟市にあるダイニチ工業は主力商品の石油ファンヒーターで海外にもチャレンジ。アジア、ヨーロッパ、南米にも輸出している。一部の重要部品は社内で製造し、開発から組み立てまで一貫して行うことで高い品質を実現している。金属部品は地元の協力工場に加工してもらい、純日本製かつ地産地消のモノづくりがこだわり。オランダのホームセンターではダイニチ工業の石油ファンヒーターが売られていた。欧米ではガスで温めた温水を流して家を暖かく保つセントラルヒーティングが一般的だが、ウクライナ紛争でガス代が高騰したため石油ファンヒーターが広がっている。ダイニチ工業の取引先であるオランダの燃料販売会社PVGはヨーロッパのダイニチ総代理店として13カ国にダイニチ製品を売っている。側面に各国語で説明文をつけるなど対応していた。ヨーロッパ最大のマーケットはフランスだという。
企業経営に詳しい入山教授は、日本は人口が減るので日本企業は世界に出ないとやっていけない、昔は難しかったが今は人材がグローバル化してさらにデジタルの力でチャンスが増えてきていると話した。入山教授が注目しているのはキャニコム。福岡県に拠点を置く産業機械メーカーで「乗用草刈機まさお」「安全湿地帯」など独特なネーミングが特徴。いきなり海外展開している企業で、社長や幹部社員が海外の農家からヒアリングして作った製品を輸出している。入山教授はこれから日本の中小企業のグローバル化は可能性の塊と話した。
石川・白山市で檜細工という伝統工芸を学ぶオーストラリア人のスーザンさんは来日して8年。すでに先生として教室で教える立場になっている。師匠である香月さんは400年続いた檜細工の作り手の最後の1人だった。そんあ香月さんから檜細工の基本を学んだスーザンさんは伝統の傘だけでなくアート作品も作っている。
白山市で檜細工を受け継ぐオーストラリア人のスーザンさんは、白山市役所でジオパーク推進課の職員もしている。英語での情報発信を一手に引き受けている。さらに外国人観光客のガイド役も務める。
後藤さんはまず自分たちが多様化しなきゃいけない、古い考え方の人たちの意思決定では社会に順応できない、自由と多様性によってイノベーションが生まれると話した。入山教授は外に出ていくには自分たちの組織をグローバル化する必要があると話した。
「湯宿だいいち」の長谷川社長の呼びかけで、中標津町では廃校となった小学校を再利用した日本語学校が開かれた。スリランカ、ミャンマー、モンゴルの学生39人が日本語を学んでいる。