- 出演者
- 合原明子 原晋 武石美有紀
今、多くの若者が職場で悩みを深めている。一方、育てる側にも苦悩がある。最新の研究では管理職の75%が若手が十分に育っていないと感じているという結果も。働き方・育成のすれ違い解消法を考える。
ブラック企業という言葉が流行語となったのが2013年。それ以降、働き方改革関連法案が成立し、職場の改革が進んでいる。ところが企業側が悩みを深めるのが、大手企業就職者(大卒)の3年以内離職率。
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大手企業を2年ほどで退職した中根千晶さんは「定時で帰れること自体は非常に満足度が高かったけれど、なんとなく漠然とした不安があった」という。退職理由は将来への不安が大きくなったから。大学時代、ラクロス部をマネージャーとして切り盛りしてきた中根さんは、部員の性格や状態に応じて、掛ける言葉を買えるなど、チームの成長を第一にして行動してきたという。社会人としても第一線で活躍したいと考えていたが、働き方改革の進む職場で戸惑い位が。業務の負担を調整してくれる環境に次第に焦りを感じてきたと言う。成長している実感を得たいと、仕事終わりに筋力トレーニングを始めた。それでも気持ちは収まらず、中根さんは2年前外資系へ転職した。ランスタッドの中根千晶さんは、個人での実績がまず大きく問われる会社なのでそれがプレッシャーとなる部分は正直あるけれど、本当に数字が出ていれば認められる環境なのですごく成長できているなと思いますと話した。働き方改革が進んだ職場をぬるいと感じ退職を考える若者が少なくないと指摘するのは、リクルートワークス研究所の古屋星斗さん。自分の職場がゆるいと感じている若手にいつまで会社で働き続けたいかを聞くと、6割近い人が3年ほどでの退職を想定している可能性が判明。
リクルートマネジメントソリューションズの武石美有紀は、企業の研修で若手の人と接しているといい、その中でご自身のキャリアに対するお悩みの声を耳にするようになったという。その背景には2つの不安があると考えているとし、1つ目は社会全体に対する不安、もう一つが周囲との比較との不安があるといい、環境の影響が大きいと考えているなどと話した。原晋も社会環境の変化は非常に大きいと思うといい、特にインターネットの普及によって世の中の全体の時間軸がものすごく短くなってきている気がすると指摘。結果として結果を求めがちになっていて、インターネットの普及で様々な情報を瞬時に習得することができる、しかしながら多様な情報をより深く掘り下げて実践しているかといったらそこまでいっていないのではないか、などと話した。
ベテラン社員からは「われわれ世代は背中を見て覚えろみたいな、いわゆるスパルタな世界で教えられてきたので」「言葉遣いや接し方が難しい」「厳しいこと言ったら辞めちゃうのかなと思うとあまりうまくはいかない」などの声が聞かれた。原晋は、サラリーマンの上司の皆さんに戦ってくださいと呼ぶかける。若者の道徳観の乱れは世の乱れ、時間を守るとか約束を守るとか挨拶をするとかができない若者に対しては、パワハラでもなんでもない、厳しく指導すべきだと思う、誰もができるミスについてはしっかりと指導していくように捉えているという。ただ一方でこの大切さにも視点を当てているという。合原明子は職場で生じるすれ違いについて、若手社員の入社前の経験の変化が関わっているという指摘もあると紹介。学生時代の社会的経験をしている若者がどのくらいいるかを調べたもので20年前と比べ大幅に増え、7割を超える学生が入社前に経験をしていると紹介。ただ、リクルートワークス研究所の古屋星斗は、学生時代の社会的経験を企業は採用活動だけでしか見えておらず、採用後の育成やキャリア形成に生かされていないと指摘している。
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入社した大手商社を3年で退職した20代の男性。会社を選ぶ上で軸となったのが、中学生の頃から10年に渡って取り組んできたアーチェリーだった。自分の経験を生かして社会に貢献したいと考え抜き、頭に浮かんだのが商社だったという。男性は大学三年生の時に希望する会社でインターンを経験。入社試験でも自分の夢を評価してくれたと思っていた。ところが、男性は入社から3年経っても希望する業務を担当できず転職を決断した。
武石美有紀は、早い段階からのキャリア教育は、学生時代からどうありたいか、どうしたいかを一定考えられている方が多く良いことだが、ただし実際に職場に行って思い描いたものと違うというギャップを感じると、不安や焦りにも繋がり、次の選択も考えてしまうということもあると思うと話した。原晋の育成術として、フィードバックではなくフィードフォワードというものがあるといい、個人がそれぞれ目標に向かって取り組んでいく中でなにか失敗したと、その時に従来の日本の教育でいればフィードバック、個人がやったことに対してダメ出しをしていくのが基本だが、フィードフォワードは個人の失敗を組織として捉えるものだといい、どうやったらより良くなるのか、みんなで話し合っていく、個人を責めないという方策をチーム内で共有していると説明していた。
これまでの一律の育て方では成長実感を持ってもらえない。大手化学メーカーは今年新人研修のやり方を一新した。導入したのが社員のタイプが分かるチェックシート。仕事もプライベートも、どっちも大切など、キャリアへの価値観や欲求を診断し、それを参考に新入社員がグループに分かれ、一年にわたり、研修や学び合いを行う。旭化成の三木祐史さんは、昨今でいくと比較的会社は好きだし職場の皆さんのことはすごく感謝をしている、けれども成長を求めてやめようかなと言う理由が増えてきているといい、個別のスキルレベルやキャリア観に沿った成長を感じてもらえるような研修にしていくことが重要だと話していた。新たな研修に対する新入社員からの評判は上々。入社1年目の吉岡郁美さんは、仕事もプライベートもどっちも大切というタイプのワークハックゼミを選んだという。医療機器の営業部門に配属され、朝や夜に病院を回ることが多く、プライベートの時間を増やしたいと考えていた。それに役立ったのが外部講師による仕事効率化のノート術。浮いた時間で友人たちと過ごす時間が持てるようになった。吉岡郁美さんは、自分のモチベーション向上にも繋がっているなどと話した。一つのことに集中したいタイプだという熊谷晴さんは、スケールの大きな仕事や新規事業の開拓がしたい人向けのアドベンチャーゼミに所属。大学院では研究に没頭していて入社後、時間の余裕があることに戸惑っていたという。その意識を変えてくれたのが研修で繋がった同期だった。熊谷さんが始めたのは中国語の勉強。自ら参考書や学習アプリを購入し、業務の開始前に学んでいる。熊谷さんは、今のところは転職はかんがえたことはないという。
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さらに、社員の転職を成長の機会と前向きに捉える動きも出てきている。大手保険会社では退職した人たちとつながる仕組みを作った。参加する退職者は385人。それぞれのキャリアを支援している。三井住友海上火災保険の荒木裕也さんは、外に仮に出たとしてもその人を応援することや戻ってきた時に受け入れることで、新しい価値観、より相乗効果が生まれてくるだろうと話す。これによって早速車内に化学反応が生まれている。3年前に転職した市川隆太さんは、子育てに向き合う中で再びキャリアを見直し、この春復職を果たした。元々在籍していた部署に戻った市川さんは、社外の経験が職場の刺激になっているという。
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リクルートマネジメントソリューションズの武石美有紀は、一般的には新人は教えなければいけない存在だと思われている方が多いかもしれないが、それだけではなく、上司世代と若手世代のジェネレーションギャップは見方を変えれば、お互いにない強みを持つ相手とも言えるという。新たな価値を作るパートナーにはもってこいだといい、教えるという視点だけではなく若手からどんな事が学べるんだろうという視点も持ってほしい、などと話した。原晋は、今の若者の文化に寄り添うことは必要だといい、フラットの目線で学生に寄り添った言い方をするように心がけている、などと語った。