- 出演者
- 首藤奈知子
オープニング映像。
関東甲信越の44自治体にNHKがアンケートを実施したところ、昨年度1年間に工事の計画が変更や延期になったケースは509件にのぼった。
- キーワード
- 日本放送協会
さいたま市では、入札が成立せず学校や複合施設などの公共施設の工事がストップする事態が相次いでいる。南区の学校の建設計画では、1回目の入札に参加した建設業者はゼロ。2回目の入札では予定価格を10%アップしたうえ工事期間を伸ばしたが、それでも入札はなかった。千葉県は県立銚子商業高校の校舎を大規模改修するため設計業務を委託する入札を4回行ったが、いずれも不調となっている。横浜市の建設会社社長は、自治体の予定価格が実態をかけ離れているとした。去年参加した小学校の体育館などの建て替え工事では入札価格は利益が出るギリギリの額だったが、自治体の予定価格はそれより2億円近く低い額だった。背景には想定を上回る資材の高騰がある。自治体の入札は見積もりから予算の議決などを経て1年後に初めて実施できる。その間の資材高騰のスピードに追いつかないケースが相次いでいる人手不足も深刻で。参加する入札の数を絞らざるを得ないという。
上森准教授、古本記者がスタジオ解説。NHKが1都9県の44自治体に行ったアンケートでは、公共施設の建築工事の入札不調はここ5年で増加傾向にあり、昨年度だけを見ても約6件に1件の割合。同じ工事で2回以上業者が決まらなかったケースもも少なくない。入札不調で一番多かったのは学校施設。上森さんは、高度経済成長期の施設の建て替えとバブル期の施設の改修が同時に来ている、一方で経営資源が豊富にある時代ではなく建設業に従事する人も30年で3割減少していると話した。さいたま市では業者へアンケートし、千葉県では発注時期を見直すなど自治体ごとの対策もみられる。横浜市などではこれまで諸費用をまとめて予定価格を定めていたが、人件費高騰を受けて現場作業員の労務費は上乗せして支払う形にしている。総務省は、公共施設を減らすことも含めた統廃合を進める指針を示している。
浜松市では1915あった公共施設を今年4月までに700に減らした。集会施設や保育園など、将来の人口なども考慮して順次閉鎖していった。建物や土地は売却し、他の公共施設の管理費用などのために積み立てている。深谷市では市役所の総合庁舎や図書館、体育館などが1つの複合施設に入っている。もともと点在していた施設の管理コストは合計で年間5500万円にのぼっていたが、集約することで約1500万円削減することができた。約10年間で27の施設を集約化によって5施設に減らした。一方で廃止される施設利用者からは落胆の声が聞かれた。市は住民への説明を続けながら、10年間でさらに15施設を削減する方針。
上森さんは、住民と問題意識を共有することが大事、データに基づいて丁寧に住民に説明することが求められる、今までの施設にはない魅力を作って住民に伝えていくことが大切と話した。奈良県では今月から、8市町の住民が別の自治体にあるスポーツ施設などを相互で利用できる取り組みを始めた。公共施設にかかる費用の4分の3は維持費であり、上森さんは維持すればするほど将来負担するコストが増えていく、自治体は何を残すべきか住民と吟味していく必要があると話した。
エンディング映像。
