- 出演者
- 首藤奈知子 姜恩和
去年3月、都内の病院に設けられた赤ちゃんポスト。親が育てられない子どもを匿名で預かる仕組み。NHKは1年余密着取材を行ってきた。預け入れが相次ぐなか想定外の事態も起きていた。
オープニング映像。
東京・墨田区「賛育会病院」に設置された赤ちゃんポスト。医療機関では熊本に続き全国2例目の取り組み。赤ちゃんが預けられると病院内のサイレンが鳴り医療スタッフが駆けつけ赤ちゃんを保護する。可能な限り預け入れに来た人からも事情などを聞き取ることを想定している。賛育会病院と東京都は1年余の取り組みを検証した報告書を発表した。預けられた赤ちゃんは20人。うち5人は健康、15人は要医療だった。預けに来た人は都内や関東が中心だが遠方からの利用もあった。
去年4月、病院に赤ちゃんが預けられたことを知らせるサイレンが鳴り響いた。看護師が駆けつけると生後1日も経っていない赤ちゃんが残されていた。赤ちゃんは呼吸障害がみられたが治療を行ったことで症状は改善していった。赤ちゃんを預けた女性は「自宅で産みました。お金がなく子どもを育てることができません」という手紙を残していた。すぐに立ち去ってしまったため病院は必要な支援につなげることはできなかった。賛育会病院がこの取り組みを始めたきっかけは後を絶たない赤ちゃんの遺棄事件。この10年で殺害・遺棄された赤ちゃんは131人に上っている。去年4月、20代女性が生まれて20時間ほどの赤ちゃんを預けたいと病院を訪ねてきた。女性は出血が多く体の中に胎盤が残ったままの危険な状態でそのまま入院することになった。就職を控えていた女性は交際相手との予想外の妊娠が発覚し、交際相手や家族に言い出せないまま一人で赤ちゃんを出産した。当初は赤ちゃんを預けるつもりだったが病院で看護師たちに話を聞いてもらう中で考えが変化した。女性は家族に出産の事実を伝え子どもを自分で育てることを決めた。預けられた20人のうち2人の母親が自ら育てたいという意思を示した。
病院の報告書では赤ちゃんの預け入れの理由として「養育できる経済的なゆとりがない」が最も多かった。赤ちゃんポストではほとんどのケースが自宅など医療者が立ち会わない孤立出産になるため母親や赤ちゃんの健康リスクが高いとされている。そこで病院では内密出産の取り組みも同時に行っている。妊娠した女性が病院の一部のスタッフ以外には身元を明かさず出産し赤ちゃんを預け入れる仕組みで、生まれた子どもは女製の戸籍に入らず家族などに出産を内密にすることができる。病院では内密出産を利用した女性は7人いた。
去年5月、内密出産を希望する20代女性が病院を訪れた。診察の結果、合併症があることが判明。自然分娩ではリスクがあるため帝王切開手術が行われた。3000gを超える健康な赤ちゃんが産まれた。女性は大学生で遠方にする両親に妊娠を知られたくないと語る。かつて貧血で倒れて救急車で搬送された時に大学の退学を求めるなど過干渉な一面があったという。内密出産に関する国のガイドラインでは、産まれた子どもが自分の出自を知ることができなくなるなどとして医療機関から妊婦に対し内密出産を避けるよう説得することを求めている。しかし病院は事情を抱える女性を説得することの難しさを感じていた。女性は出産から1週間後、子どもを預けたまま退院した。この日、内密出産を希望する妊婦がやって来た。これまで一度も病院を受診しておらず飛び込み出産だった。内密出産の取り組みは事前に複数回の相談や診察を行い十分な検査や支援策を提案する想定だった。内密出産7件のうち飛び込み出産は3件に上った。さらに国のガイドラインに記載がなく対応に悩む事態も起きていた。未成年からの内密出産に関する問い合わせは1年で5件あった。未成年の手術には原則親権者の同意が必要。内密出産を行うと親権者から訴えられるリスクもあり受け入れるかどうか難しい判断を迫られる。
内密出産では母子のリスクが高まる飛び込み出産のケースが7件中3件あった。姜恩和さんは「受診へのハードルの高さを示している」などと指摘。また未成年の内密出産という課題も見えてきた。病院では問い合わせはあったものの最終的に断るケースはなかったとしている。姜恩和さんは「未成年者に対する医療行為に保護者の同意を求める日本社会において病院が背負うリスクは大きい。今後国としてどうすべきか検討していくべき」と見解を示した。
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去年秋、預けられる赤ちゃんの数が急増していた。この日病院を取材するとベッドにいたのは7人の赤ちゃん。赤ちゃんたちはこれまで1週間程度で退院し児童相談所を介して都内の乳児院などで育てられてきた。しかし都内の乳児院が満床状態のため受け入れる余裕がないとして院内にとどまらざるを得なくなったという。東京・江戸川区の乳児院では35人の乳幼児を預かり52人の職員が24時間体制で養育している。この施設では1年ほど前から0歳児の受け入れ要請が急増し満床状態が続いている。背景にあるのが虐待による一時保護の増加。都内の乳幼児全体が同じ傾向とのこと。
