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債務危機をめぐる国際交渉の舞台裏を特集。IMFに加えて近年は中国などが台頭。世界が一丸となって危機に対処することが難しくなっている。日本が主導した交渉に半年間密着した。
IMF・世界銀行年次総会がモロッコで開かれた。焦点は途上国の債務問題。債務危機を止めるため日本が主導した交渉に密着した。デフォルトに陥ったスリランカの負債総額は360億ドル。22か国が融資未回収リスクを抱えた。財務省の交渉チームを率いるのは神田眞人財務官。債務状況の分析と交渉の課題について議論した。世界経済の混乱に波及することを防ぐため、返済期間や金利などを交渉し、各国の公平負担で合意を目指す。すでにデフォルトに陥っている国は3カ国。IMFが警戒を高めている国は34カ国にのぼる。背景にはコロナ禍やウクライナ侵攻がある。欧米各国は急速な利上げに踏み切り、途上国は通貨安や外貨不足に陥っている。スリランカでは困窮した国民が大統領公邸などを占拠。大統領が国外逃亡するなど混乱の極みとなった。後を引き継いだウィクラマシンハ大統領は、当時の政権が外国から金を借りすぎたことが一因だと話した。外国企業からの投資が止まり、日本の事業にも大きな影響が出ている。
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9月、神田財務官はフランス・パリを訪れた。近年、パリクラブに属さない中国やインドが台頭し、国際協調が難しくなっている。中国の融資は金利が高く、返済期間も短い。先進各国と足並みがそろわず、債務再編の協議が進まない事態が起きている。神田財務官はアメリカなどの担当者と会談し、早期の合意に向けて根回しした。協議が合意に至れば、IMFはスリランカへの緊急融資を進められる。IMFはスリランカに1兆3000億円の税収確保を求めているが、困窮する国民は猛反発。スリランカの貧困率は28%になると予測される。国際協調の難しさは増し、債務危機に陥った国の国民からは反発の声が上がり、IMFは難しい舵取りを迫られている。
債務危機の源流には溢れ返ったマネーの存在がある。きっかけは2008年のリーマンショックで、欧米各国が大規模な金融緩和を実施。中央銀行によるマネーの供給は増え続け、25兆ドルにまで膨らんだ。そして去年から始まった欧米各国の利上げによって、マネーは一気に途上国から引き上げられた。その影響でデフォルトに陥ったのがガーナだ。ガーナへの資金流入は多い年で25億ドルに達したが、去年は21億ドルの資金が外国へ流出した。シカゴ大学のラグラム・ラジャン教授は、スリランカやガーナが直面した金融緩和の副作用に世界はもっと目を向けるべきだったと指摘した。
9月下旬、スリランカの債務再編交渉は大詰めを迎えた。各国とのオンライン会合を翌日に控え、会合での議題を取り仕切る真船貴史開発金融専門官が合意案の検討を続けていた。焦点のひとつは金利水準。パリクラブに属さない中国やインドに配慮し、金利を高めに設定した案も提示した。会合は2時間に及び、各国の理解は得られつつあった。しかし一部の国は中国への懸念を示し、合意への疑問を呈した。エイドデータ研究所は、中国が債権を回収するための抜け道となる専用口座の詳細を突き止めた。中国の手法は各国との交渉の足かせとなる。そして迎えた10月のIMF・世界銀行年次総会。現地でもギリギリまで交渉を重ねたが、大筋合意には至らなかった。さらに日本主導の交渉に先んじて、中国が単独でスリランカと合意した。神田財務官は中国を含めた国際協調が日本にとって避けられない課題だと話した。
金融緩和から利上げに転換し、マネーの流れが大きく変わる中で高まるデフォルトのリスク。その危機から脱するための国際協調の不振。ラグラム・ラジャン教授は危機は常に無関心と隣り合わせにあると話した。FRBのパウエル議長はさらなる利上げが必要ならためらわないと強調している。アルゼンチンでは通貨安が急激に進行し、デフォルトの瀬戸際に立っている。スリランカでは厳しい国民生活が続いている。世界は危機を乗り越えるすべを見いだせていない。
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