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雪原の地で生活していたり、体表が羽毛で覆われていたなど、恐竜の常識が大きく塗り替えられようとしている。最新科学で恐竜たちの真の姿に迫る。
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世界有数の恐竜化石の産地として知られているゴビ砂漠で、半世紀前に巨大な2本の腕の化石が掘り出された。骨の形からティラノサウルスに近い恐竜だとわかったが、そこから体長を推定するとティラノサウルスの約3倍、全長30mの化物ということになった。この恐竜は「恐ろしい手」を意味する、デイノケイルスと命名された。そして今年、全身骨格が見つかり、約4時間をかけて再現を試みた。デイノケイルスは全長11メートルで、腕だけが異様に大きいアンバランスな姿をした恐竜だった。奇異なのは肉食恐竜の仲間でありながら口に歯が1本も生えておらず、背中には巨大な帆を有していた。新発見によって摩訶不思議な度合いが増したという。
6600万年前のゴビ砂漠は自然が溢れ、鳥のような羽毛で覆われた全長2mのアビミムスの群れが生息していたと考えられる。最新科学をもとに再現を試みたデイノケイルスも全身が羽毛に覆われていたとされる。天敵は全長11mのタルボサウルス。
羽毛の生えた恐竜の化石が最初に発見されたのは中国・遼寧省で、その恐竜の名前は「シノサウロプテリクス」。小型の恐竜だけに羽毛は生えていたと考えられていたが、後に発見された化石から巨大な恐竜も当てはまった。さらに恐竜が羽毛を生やしていたということは、鳥の祖先だったということになる。爬虫類のような変温動物ではなく恒温動物で、体温を一定に保つことができていた。
6600年前のモンゴルに生息していたデイノケイルスの1頭に注目。ニコと名付けられたデイノケイルスは植物を丸呑みし、別に飲み込んでいた腹部の石ですり潰して消化していた。このニコが邂逅したプロトケラトプスは穴に潜んでいて、地面の上で生活していたと考えられていた恐竜の常識を揺るがすこととになる。また、2017年に発見されたハルシュカラプトルは化石の特徴から、潜水を得意としていた。ちなみにデイノケイルスの腹部の石から魚の骨が発見されていて、異様に大きな腕を湖面で振って、魚を獲っていたという。
筑波大学の田中康平博士は恐竜の骨以上に卵の化石を重視している。同氏が中国の博物館で調査したのは長さ40cmの卵で、デイノケイルスに比較的近い恐竜の仲間と考えられた。
恐竜時代、6600万年前のモンゴル、背中の傷はニコだ。身体は一周り大きくなって羽毛の色も赤みが強くなっている。また、現代の鳥のように羽毛や羽は求愛に重要な役割を担っていたと考えられる。加えて、羽毛は卵を温めるのに一役買ったことだろう。
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- デイノケイルス
筑波大学の田中康平博士は大型の恐竜では産んだ卵を自らの足で踏みつけてしまう可能性があったが、一部の羽毛恐竜は自分自身を中心に卵を円形に配置して羽や羽毛で温めていたのではないかと推測する。
羽毛恐竜が卵に寄り添うことは我が子の命を守ることに繋がり、闖入者を追っ払ったりしたかもしれない。卵の大きさからデイノケイルスの抱卵は90日に及んだという。
羽毛によって体温を一定に保つことができ、抱卵にも一役買った。生息圏は拡大し、恐竜たちは北極圏で1年を通して暮らしていたこともわかった。また、羽毛恐竜のトロオドンは恐竜界No.1の知性派だったという。
トロオドンの仲間はティラノザウルスと脳の大きさを比べると脳の大きさが3倍であるという。アメリカのオハイオ大学のウィットマー博士は、脳にたくさんのエネルギーを与えるには多くの食料が必要で、羽毛の助けで恒温動物となり俊敏に動けるようになったなどと話した。
恐竜界で最大サイズの脳を持っていたトロオドンの生態に迫る。ホワイトと名付けられたトロオドンは鷺の仲間で見られるように虫でおびき寄せた魚を獲っていたという。また、秋季に見つけた木の実を土に埋め、厳しい寒さで獲物にありつけない時には急場をしのいでいたかも。現代ではカラスなどに見られる行動。その他、大型恐竜による襲撃など、極限環境のせめぎ合いはトロオドンの知性を高めたかもしれないという。
最近の研究で鳥の脳は哺乳類と比較して、2倍以上の密度で脳神経が詰まっていた。鳥の知性は人間の子どもに匹敵するとも言われている。トロオドンの脳も鳥と同じだったとしたら、現在の鳥が行うような行動も十分にあり得るという。
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雪解けを迎えた北極圏ではトロオドンのオスが抱卵していた可能性がある。そして、卵から孵った子どもに対して、親は狩りの技、知恵を伝えたかもしれない。
上古の歴史を生きた恐竜たちが残した痕跡を求め、研究者たちは今日も世界中で調査を続けている。小林快次氏によると、今見つかっている恐竜は約1000種類で、「氷山の一角の一角の一角をひっかいたぐらい」だといい、これから知らなかったような恐竜や生態が明らかになってくるという。
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- アラスカ州(アメリカ)恐竜