あさま山荘事件では速報性というテレビ報道の一つの役割が象徴的に示されたが、一方で強い影響力ゆえの思わぬ出来事も起きていた。あさま山荘事件の実況を担当した元アナウンサー・久能靖さんは事件後に起きたある出来事に胸を痛めてきた。犯人が逮捕された3日後、救出された女性の病室に、記者が押しかけたときのこと。涙ながらに取材に応じて答えた「うどんを食べたい」と言った言葉が一部メディアに切り取られて報じられると女性に向けた社会からのひぼう中傷が始まった。地元では毎年殉職した警察官の命日に合わせ慰霊式が行われてきた。女性も慰霊碑に出向き、祈りを捧げてきたが事件以降、メディアの取材に応じることはなかった。