1月の地震と9月の豪雨は、多くの人たちから生活のなりわいを奪い、漁業も大きな打撃を受けた。七尾湾でかきの養殖を行っている宮本哲也さん、息子・崇弘さんを1年にわたって取材した。崇弘さんは大学卒業後に県外の菓子メーカーに就職したが、重労働を1人でこなす父の体を気遣い、去年の5月に戻ってきた。夏には水揚げ量が地震前の2割まで戻りつつあったが、9月に能登半島を豪雨が襲い、大量の冷たい水が海に流れ込んだことで秋の収入源だった岩がきが売り物にならなくなった。毎年12月ごろまで販売していた岩がきが出荷できず、3か月分の収入が断たれた。以前は経営を支えていたかき小屋は全壊判定を受け、取り壊しのメドすら立っていない。宮本さんはコンテナハウスを購入し、仮店舗で営業できないか模索している。岩がきの稚貝を沈め、能登の海でじっくり育て3年後の出荷を目指している。