かつて日本の水産物の最大の輸出先だった中国だったが、中国の市場に「日本産」の文字は消えた。きっかけは1年前に始まった福島第一原発の処理水の海洋放出。中国政府は処理水を「核汚染水」と非難し、対抗措置として日本全国の水産物や水産加工品の輸入を全面的に禁止。違反したものは法に基づいて厳しく処分すると発表した。しかし日本産の水産物が裏取引で今も売られているとの情報を掴み、取材班はある店に向かった。「日本産のものはあるか?」と問いかけると処理水放出前に輸入したというイクラが出てきた。販売は認められていないが闇取引されている。「時々監査が入る」と言いながら出してきたのは鹿児島県産のブリに北海道産のキンキ、富山県名物の白エビなど。日本産を求める顧客に高額販売していた。さらに別の店でも最初は「日本産は売っていない」と言い張っていたが、「本当に買えないのか」と問い続けると「向こうの倉庫にある。取ってくる」と言い、北海道産のイクラを持って戻ってきた。日本産が禁止となったあとも輸入されていた。しかも「他に欲しいものはあるか?」と聞いてくる。まだまだ日本産の商品を持っているという。一体どのように輸入しているのか。取材を続けるとその答えがある中国人オーナーの日本料理店で明らかとなった。ウニは中国の大連産、ホッキ貝はロシア産というが「日本から輸入?」と聞くと「ロシアだよ。みんな”ロシア産”って口裏を合わせるだけだけど」と話す。聞き続けると「どこでとれたか…北海道だと思う。北朝鮮からなんだ」と話す。北海道でとれたホッキ貝が北朝鮮経由で運ばれ、ロシア産のラベルに貼り替えられていると明かした。今が旬の日本のイサキ・アジは韓国経由で輸入されるという。さらに1匹1万8,000円のキンキは当局の目をかいくぐって日本から直接輸入しているという。中国の富裕層を中心に依然人気の日本食。高い金額を払っても日本の魚を食べることにステータスを感じる客も少なくないという。また、貿易などを行う中国の業者も取材に対し「韓国や台湾などを経由させることで産地を変え、日本のホッキ貝や甘エビなどを仕入れている」と密輸のカラクリを証言した。根強い日本産水産物への人気とは裏腹に、中国政府は禁輸措置を取り続けている。