バルセロナ五輪とシドニー五輪の1万m競技で2度金メダルにデラルツ ツル選手。1万mで2度の金メダル獲得はデラルツ ツル選手が初だった。1972年にエチオピアで生まれた彼女。生まれ育った場所は田舎で家畜の番や水くみなど走り回ることが多かったという。ただ走ることが楽しかったと振り返るデラルツ ツル選手、彼女の出身国であるエチオピアは裸足のランナーとして知られるアベベ ビキラのような優れた長距離ランナーを輩出している。ただ彼女が競技を始めた当初、女子のメダリストはいなかった。15歳の頃にコーチから誘われ陸上競技の道へ進んだデラルツ ツル選手はジュニアの大会に優勝、メダル候補の1人としてバルセロナ五輪に出場する。またこの年隣国の南アフリカはアパルトヘイトが廃止され32年ぶりのオリンピック出場、ライバルだったエレナ マイヤー選手と決勝でぶつかることになった。終盤に勝負をかけるレース展開を得意とするデラルツ ツル選手。エレナ マイヤー選手が早めのスパートをかけ、試合は2人の一騎打ちに。レース最終盤、デラルツ ツル選手が抜け出し金メダルを獲得した。アフリカの黒人女子選手として初の金メダル獲得を果たしたデラルツ ツル選手、彼女をマイヤー選手が祝福した。帰国したデラルツ ツル選手は国民的ヒロインとなった。出産を経て挑んだシドニー五輪では再び1万mの王者となったデラルツ・ツル選手。現在は現役を退きエチオピア陸上連盟会長に就任し、女性の社会進出と活躍の象徴となった。デラルツ・ツルが放つ輝きはこれからもアフリカの未来を照らし続ける。