第一生命経済研究所・田中理さんの解説。昨晩のECB理事会では2会合連続での利下げが決定された。田中さんは「ECBは9月に見通しを発表しているがその時の想定と比べて景気が大幅に下振れをしている、より迅速な金融政策によるサポートが必要となっているいうのが背景にある。PMIを見ると9月に50を割っている。過去値で上方修正されたが速報値では悪化していた。パリ五輪の影響で8月に盛り上がったがそれが剥落したのはあるが、かなり下がっている。製造業が底堅く推移してきたが変調の兆し。欧州経済は年明け以降ゆるやかに回復の動きが広がっているが、7-9月期は息切れ。ドイツはリセッション入りが間違いない。ECBの政策判断もこれまではインフレ警戒だったが徐々に成長サポートにシフトしてきている。9月の消費者物価は1.7%。2%を割り込んでいる。主因はエネルギー。サービスも少し減速の兆し。サービスの高止まりの背景には賃金の伸びがあるが、賃金上昇率は一段と鈍化していくということがほぼ見えている。サービス物価も徐々に沈静化に向かうと思う。足元の景気減速や労働需給も緩和に向かっていることを考えると利下げペースを加速しても物価が再加速するというリスクは限定的ではないか。追加緩和を見送っていた場合、対応が遅れると、12月にもっと多く利下げをしないといけない後手にまわる可能性があった。さらに景気にブレーキがかかる可能性があるので事前に利下げを決定した。中東情勢もあるので原油が上がる、下がる見方あるが、上がると警戒。ECBもインフレ警戒を解くわけにはいかない。利下げパスは約束しないでデータをしっかり点検しながら理事会ごとに判断していく方針を示唆している。ドイツ景気の停滞については循環要因と構造要因両面あると思うが循環要因については今後は少し上向いてくる。構造要因についてはしばらくは足を引っ張りそう。大きなものはエネルギーと財政があるが、エネルギーは脱ロシアを進めるなかで高止まり。財政はEUのルールではなくドイツの独自の財政規定に縛られ緊縮的財政運営をせざるを得ない。エネルギー価格はロシアによるウクライナ侵攻から上がって、22年からは下がっている。水準は侵攻以前から1.5倍ぐらいある。ドイツの企業ではコスト負担が重しになっている。化学産業はドイツから外に出ている。財政は裁判所が政府の予算措置に違憲措置を出した。ドイツは来年の秋に選挙がある。現在の連立政権も支持率が低くレームダック化している。ドイツの雇用環境に変調の兆しがみえる。当面景気低迷が続きそうでサポートが必要な状況。ECBはあまりにも急いで利下げするとインフレ再燃すると警戒していた。足元の景気を考えると従来より性急な利下げが必要。12月も追加利下げは間違いない。大統領選挙の結果などをふまえ、米欧、米中の貿易摩擦などもある。ヨーロッパの景気にとってもさらなる逆風」などと述べた。