アメリカ連邦政府職員に対する早期退職の申し込みの期限は一旦差し止めとなった。イーロン・マスク氏はトランプ政権で政府支出の削減策を検討する組織・DOGE(政府効率化省)を率いている。アメリカの連邦人事管理局が先月28日、連邦政府の職員に通知した内容を紹介。コロナ禍以降、在宅勤務を続けていた職員は週5日の出勤に戻るよう指示している他、連邦政府の職員は忠実であるべきだなどとして早期退職を選択する場合、今月6日までに決断すれば今年の9月末までの給与と福利厚生が維持されるとしている。その表題が「Fork in the Road」。分岐点や分かれ道といった意味。マスク氏は2022年、現在のXである旧ツイッターを買収したあとに社員たちにメールを送り、長時間猛烈に働くことを選ぶか、それとも会社を辞めるか、選択を迫った。そのメールの表題も「Fork in the Road」だった。旧ツイッターはマスク氏による買収後、1か月足らずで全体の6割以上の社員削減が行われたが、その後も運営は続いた。マスク氏の信条の一つである能力主義がアメリカの連邦政府職員に対しても突きつけられている。トランプ大統領は連邦政府の官僚機構がディープ・ステート(闇の政府)に牛耳られているという陰謀論を主張し、連邦政府の抜本的な改革を公約にしてきた。2期目の就任後、政策を相次いで実行に移している。まず「DEIプログラム」を廃止した。DEIとは、多様性、公平性、包摂性を意味する。バイデン前大統領が政府機関に対し、人種や宗教、性的指向などにとらわれず多様な人たちを積極的に採用することなどを求めたものだが、トランプ大統領は勤勉さや実績などが危険な優遇措置に置き換えられ組織が腐敗したとして廃止した。また、連邦政府職員の中で重要な政策に関わる職員を政治任用とする制度を復活させた。政治任用の職員は解雇しやすく、トランプ大統領は1期目にもこの制度を導入したが、その後、バイデン前大統領が廃止していた。ただ、能力や忠誠を重んじるトランプ大統領やマスク氏のこれらの手法が官僚機構でも機能するか不透明で、邦政府内に混乱をきたし、結果的にアメリカ国民の生活や安全に支障をきたすことも危惧されている。