カブス・今永昇太投手は、大リーグ1年目の昨シーズンは15勝を挙げて、防御率は2.91と、いずれもリーグ3位の好成績を残した。考えや理論を言語化することにたけていて、投げる哲学者とも呼ばれる。2年目に壁にぶつかるジンクスにも、自分を貫いて挑もうとしている。2年目で初の開幕投手を任された今永投手。持ち味は大リーグ屈指の回転数が生み出す高めに伸びるストレート。そして低めに鋭く落ちるスプリット。高低差を生かした投球術で躍動した1年目から研究され、2年目を迎える。今永投手は、投球スタイルに変化を加えようと筋力トレーニングに取り組み、体を大きくした。より速いボールで力勝負を挑もうとした。しかしキャンプ序盤。生命線のストレートの伸びを欠き、コントロールが定まらない。甘く入ってホームランを打たれる場面もあった。肉体の変化が力みにつながっていたと分析。そこでボールの速さではなく、本来の伸びやコントロールで勝負しようと軌道修正。キャンプ終盤、手にしたのは現地で買ったハンドボール。みずから考えた独自の練習に取り組んだ。毎日のように繰り返してフォームを体に覚え込ませ、本来のボールの伸びを取り戻そうとした。カブス・今永昇太投手は、2年目のジンクスを打ち破るために工夫したのがスライダー。昨シーズンは全体の1割にも満たなかった苦手な球種だが、横の変化が加われば、投球の幅が広がると考えた。開幕前、最後のオープン戦では、その成果がかいま見えた。昨シーズン、39本のホームランを打った大リーグ屈指の強打者・ホセラミレス選手との勝負。最後はスライダーで空振り三振。3つ目の選択肢で、相手のタイミングを外した。みずからを冷静に分析して高みを目指す投げる哲学者。2年目のジンクスに立ち向かうシーズンも、自分だけの野球道を貫く。今永投手は「まぐれでもない、自分の力で歩んできたところを示す必要がある」と語った。きょうの会見で、ドジャース・大谷翔平選手との対戦について、今永投手は「世界一の選手なので、時には彼の技術が上回ってしまうかもしれないが、それで試合は決まらないので、試合が決まるそのときまで頑張りたい」と独特の言い回しで意欲を示していた。