旭川市で開催された菓子博。開幕前日には工芸菓子の審査会が行われた。全国から90点の作品が出展され、技術や美しさなどを競った。この審査会に、地元旭川市から挑戦した菓子職人の早川啓二さん。早川さんは40年以上にわたり和菓子作りを続けてきたが、工芸菓子の審査会は初挑戦。その背景には、次の若い世代にバトンをつなぎたいという思いがある。菓子業界では、国家資格の合格者数が最近の10年間は減少傾向。職人の高齢化も進み後継者不足が大きな課題となっている。早川さんが挑んだのは、旭川市の市民の木ナナカマドと花を組み合わせた生け花。特にこだわったのが花びら。生地を極限まで薄く伸ばしてできるだけ本物に近づけることを意識した。半年以上かけて試行錯誤を繰り返してきた。一輪の花に使う花びらは約80枚。花びらを重ね合わせる作業は予想以上に手間がかかったという。菓子博開幕4日前、早川さんは慎重に作品のパーツを運び入れた。作品の仕上げを担うのは、生け花のデザインを手がけた華道の先生。繊細な菓子の一部がかけるハプニングもあったが、約3時間で完成。早川さんが思いを込めて作った菓子が1つの生け花になった。開催期間中、早川さんの作品は会場を訪れた多くの人達を楽しませた。審査では惜しくも入賞を逃したが、早川さんの表情には充実感が漂っていた。