小岩井乳業からグループ会社のキリンに出向した城内さんは、2009年に乳酸菌の研究所へ異動した。研究者の藤原さんは未知の乳酸菌の研究を1人で続ける変わり者だった。藤原さんはプラズマサイトイド樹状細胞、通称pDCを活性化させれば未知の感染症が発生してもパンデミックを抑えることができると考えていた。pDCはウイルスや細菌などの異物が体内に侵入した際にしばらく経ってからスイッチが入り免疫細胞に司令を出す。すると免疫細胞が活性化して異物を排除する。排除までに時間がかかるとウイルスが体内で増殖して風邪などの症状が悪化する。事前にpDCのスイッチを入れ臨戦態勢にすることができれば、排除にかかる時間を短くすることで症状を和らげられる。藤原さんの仮説は、pDCのスイッチを入れる乳酸菌も存在するのではないかというもの。pDCを活性化させる乳酸菌はないという論文が世界的製薬会社から発表されていたが、同じ菌種でも異なる性質を持っていることがあるため、ほぼ無限の乳酸菌を調べる必要があった。異動から1年後にpDCを活性化できる乳酸菌が見つかった。後の研究で見つかった乳酸菌は人体に無害であるとわかり、pDCの活性化が認められた。pDCの正式名称からプラズマ乳酸菌と名付けられた。藤原さんたちは自ら小岩井乳業に掛け合い、プラズマ乳酸菌入りの飲むヨーグルトの試作を依頼した。
