むき出しの力で隣国を支配しようとするロシアに、どう対峙するのか。今月就任したドイツのメルツ首相は、ドイツの兵器でロシア領内を攻撃することも容認に転じている。メルケル元首相は「いま重要なのは、欧州独自の強力な軍事的抑止力を構築すること。『後悔は何か』と問われたら、それは軍事力強化のスピード。軍事力がなければ、ウクライナは勝てない」などと述べた。ベルリンの壁崩壊から30年余り、世界には再び自由を阻害する壁が築かれつつある。この状況について、メルケル元首相は「自由とは自分のことだけ考える不謹慎なものではなく、他者の自由を認める必要がある。現在の民主主義は、ドイツが統一した1990年当時より強い圧力にさらされている」などと指摘した。前ローマ教皇のフランシスコは、意見の隔たりがある相手にどう対応するかについて「曲げて、曲げて、曲げて、けれど折れないようにすること」と語ったという。メルケル元首相は「自由を守るために最も重要なことは、妥協を良しとすること。妥協する覚悟がなければ、共存はできない。全員が自分の主張に固執すれば、コミュニティーは崩壊する」などと話した。インタビューを行った大越健介は、「軍事力強化のスピードを速めておくべきだったという後悔の念を口にしたことに、理想を語るだけでは済まないという現実主義者の真骨頂を見た」などとコメントした。