今月3日に流通が始まった新しい紙幣の原料となっているのはミツマタという樹木。かつては国内で調達されていたが、生産量が減少し入手が難しくなっていた。そのピンチを救ったのは実は日本からおよそ5000キロ離れたネパール。生産地を取材した。束になって積まれているのはミツマタ。日本では古くから和紙の原料などとして用いられ、明治から紙幣の原料として使われてきた。ただ、高齢化などを背景に日本国内での生産が減る中、今では多くを海外からの輸入に頼っている。その産地の一つ、ネパール。首都カトマンズから車で7時間以上、標高2000メートルを超えるヒマラヤ山脈のふもとで作られている。ミツマタはもともと水はけや日当たりがいいこの地域に自生していた。そこに注目したのが大阪で政府観光物の販売などを手掛ける会社。加工は主に冬場。木の皮を剥いだあと凍りつくような寒さの中、水にさらす過酷な作業もある。会社では30年余りにわたって現地で栽培や加工の技術を指導してきた。9年前の大地震では多くの農家も被災したが、復興を支える収入源にもなったということ。今では1000人以上が生産に携わり、この会社では年間100トンを買い取るまでになった。日本で新紙幣の流通が始まった今月3日。ネパールのミツマタが日本の紙幣に生まれ変わることを喜んでいた。