2022年、北京五輪の閉会直後から始まったロシアによるウクライナ侵攻は、2年以上経った今も収束の気配はない。さらに去年から始まったイスラエルとハマスとの大規模な戦闘も、イスラエル軍がガザ地区に地上侵攻するなど、激化の一途をたどっている。そんな中、パリ五輪が行われる意義とは何なのか、これまで五輪をはじめとする数々の国際大会を取材してきたスポーツジャーナリストの二宮清純氏に話を聞いた。二宮氏は「いろいろな世界の歪みがいっぱい詰まっている大会になる。いわゆる国連が決めた休戦事項みたいなものを、簡単に破っていいのかという声があって、法的な拘束力を持たないという事実もまたある。人種・宗教・国家・民族を超えるとなると、五輪しかない。五輪は平和の祭典だということを伝え続ける必要がある」と話した。更に1894年にIOCを設立し、「近代オリンピックの父」と呼ばれるピエール・ド・クーベルタン男爵の残した言葉を、今こそ世界の人に覚えてもらいたいという。クーベルタン男爵が「100年後にこの世界に戻ってきたなら、自分が作ったものをすべて破壊する」という言葉を残したのは、第1次世界大戦後の1927年とされており、理想と現実の乖離からそういった言葉を発したとの見方もある。二宮氏は「クーベルタン男爵が五輪をやめようと言うのは、100年経ったら今生きている人たちで、新しい形の五輪をもう一回考えてほしいという意味ではないかと思っている」などと話した。世界選手権とオリンピックの違いについて二宮清純氏は「世界選手権は文字通り世界を変える大会で、五輪は必要ないという声もあるが、現段階で五輪に代わる平和の祭典はない」などと話した。五輪開催の度に、そのあり方について考える必要があるという。二宮氏は「ある意味、矛盾を抱えた運動体だ。4年に1回、世界の進歩と後退を確認することができる。五輪はショーウィンドー的な要素を秘めている」などと話した。今後の五輪の新たな役割について二宮氏は「これまでのオリンピックは祝祭で良かったが、これからは地球規模の課題解決型オリンピックになっていく。テロ問題・環境問題・ジェンダーの問題は、オリンピックだけの問題ではなく、地球規模の世界全部が抱えている問題。その中でオリンピックが一つ一つ解決とまではいかないが、どう改善していくかということに世界も注目している。そういう意味でも今度は、オリンピックのミッションがより重要になってくる」などと話した。
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