先月ミャンマーとの国境に接するタイの町メーソートでライブが開かれた。歌っていたのは、ミャンマー人の歌手で作曲家のネイ・ローンさん。観客の多くは戦闘が続くミャンマーを逃れタイに避難いている人たち。メーソートの町中にある食堂で働いているネイ・ローンさん。かつてはミャンマーの最大都市ヤンゴンで歌手として活動しながら、恋愛ソングなどを作曲し多くのアーティストに提供してきた。その人生が大きく変わったのは4年前のクーデター、軍による弾圧で多くの民間人の命が奪われた。ネイ・ローンさんは、所有していた自宅や音楽スタジオなどほぼ全ての財産を投げ売って民主派の武装組織に参加した。ミャンマー南東部を拠点に3年間戦ったが、仲間たちが次々と命を落としていったという。出口が見えない戦闘が続く中で、自分に出来ることは何なのか。ネイ・ローンさんは今、銃ではなく”歌”で軍に抵抗しようとしている。作る歌は全てクーデター後に自分や仲間たちが実際に経験したことに変わった。歌はYouTubeなどで公開し、欧米などの外国に済むミャンマー人にも広く拡散されている。100万回以上再生される曲も多く、これまでに日本円にして約900万円の寄付が寄せられた。ネイ・ローンさんは音楽で得たお金を全てミャンマー人への支援に使っている、この日は深夜2時から炊き出しを行っていた。ミャンマー国内にある民主派の拠点に国境を超えて密かに運ぶためだという。故郷を追われ避難生活を余儀なくされた人たちのために、服なども購入し避難民キャンプなどに届けている。さらに今、ネイ・ローンさんは戦闘で負傷した人たちのもとを頻繁に訪れている。この日訪れたのは、負傷したミャンマー人のための療養施設。かつて民主派の武装組織で共に戦った男性は、戦闘で右腕と視力を失った。傷を負った人たちに、せめて歌を届けたいと考えている。今もミャンマーの民主化を願って命を懸けている人たちがいる、そのことをネイ・ローンさんは歌を武器に伝えていきたいと考えている。