東京都千代田区で行われたソフトバンクの株主総会。創業者の孫正義取締役も見守る中、宮川潤一社長が打ち出したのは「空飛ぶ基地局」。アメリカの航空宇宙部品を扱うスカイ社が開発した巨大な飛行体を成層圏に飛ばし、基地局として利用する。この方法は成層圏通信プラットフォーム、略して「HAPS」と呼ばれている。通常の基地局では一般的に直径10kmの範囲しかカバーできないが、HAPSなら1台で直径200kmをカバーすることができる。災害時に基地局が被災しても、飛行体からの通信を提供することで復旧することができる。来年から限定的にサービスを提供し、2027年以降の本格運用を目指す。NTTドコモは、ソフトバンクと同じHAPS形式での空飛ぶ基地局の開発を進めている。アンテナを載せた大型無人機とスマートフォンとの通信に成功していて、2026年の商用化を目指している。一方楽天モバイルは、衛星を使った新たな通信サービスを開発している。4月に衛星とスマートフォンの直接通信によるビデオ通話に成功したと発表し、来年中に導入したいとしている。衛星通信のサービスで先行しているKDDIは、2022年に高度約550キロの衛星を利用したアメリカ・スペースXの通信サービス「スターリンク」を開始。さらに4月には国内で初めてとなる衛星とスマートフォンが直接通信するサービスを開始し、電波の届かない場所でもショートメッセージやチャットなどが使える。ライバル企業の動きについて、KDDIの松田浩路社長は「現在でも提供できることが大きな差別化、差異化だと思っている」と述べた。キャリアごとに注力する部分が異なるが、それぞれのメリットについてSOMPOインスティチュート・プラスの秦野貫上級研究員は「カバー範囲としては衛星の方が広い。HAPSはタイムラグが抑えられ、メンテナンスが容易。HAPSはコストや技術面で人工衛星に比べるとリスクが低い」などとコメントした。