大規模な災害時には避難所の開設を担う自治体の職員が被災することも想定される中、長野県松本市では住民が主体となった訓練を通じて地域の防災力を高めようという取り組みが行われた。ことし1月、松本市で行われた研修会に集まったのは県内各地で防災に取り組むリーダーなど。テーマは「避難所の開設について」。地域の中心となる人たちに実践的な知識を深めてもらい災害時に率先して避難所の開設を進めてもらおうと県や信州大学などが開いた。この取り組み、長野市の松代地区などの事例が参考になっている。松代地区では6年前の台風19号で被害を受けて以降、その経験を伝え防災減災を進めていこうという取り組みが行われていておととしからは住民がみずから避難所を開設運営する訓練を続けてきた。訓練ではグループに分かれて避難所をどう開設するか考える。初めに参加者には災害発生直後の対応をまとめたリーフレットが配られた。緊急車両や物資の入り口をどこにするかや、体育館の鍵を誰が持ってくるのかなど避難所開設のポイントを考えてもらう内容になっている。参加者の1人、上田市の福沢かおりさんは防災減災の啓発活動などに取り組む県の自主防災アドバイザーの1人として参加した。話し合いでは避難場所となる体育館のレイアウトをどうするかも議論した。その後、避難者役、運営役に分かれて実際に訓練が始まった。福沢さんたちは受付の設置など避難所の整備を急ぐ。避難者は高齢者や赤ちゃん連れの人など実際に即した設定になっている。体に障害がある人でも安心して過ごしてもらえるよう寝起きする場所にできるだけ近いところにもトイレを設置した。中学生の子どもを持つ福沢さんは女性や親の立場から積極的にアイデアを出し、個室の授乳室や更衣室など女性が安心して利用できるスペースを確保した。また何かあったらすぐ、絶えず回っているので言ってください、など一人一人に丁寧に声をかけ困り事がないか確認していた。そして訓練を終えるとグループごとに意見交換をし課題を共有する。福沢さんは今回の訓練を地域に持ち帰り、さまざまな立場の人が避難しやすい環境を作りたいと考えている。主催した信州大学などはこの試みを県内に広げ避難所の開設運営を担うことができる人を増やして地域全体の防災力を強化したいとしている。長野県ではこうした研修会を今後、各地で開いて地域の防災の中核を担う人材の育成を進めるという。