去年川崎・中原区にオープンした店舗では店の中で野菜を栽培し販売している。ここでは5人の知的障害のある人たちが野菜の栽培作業を担っている。野菜の収穫や袋詰め、さらに種植えの作業など細かな仕事もこなしている。重度の知的障害があり働くのはここが初めてだという鎌谷麗奈さんが働くことを可能にしたのがAIを使った最新のシステム。それぞれの障害の特性に合わせた職場の環境作りを提案する。数字や時間などの問題に答えてもらうことでどんな情報を認識できるか分析。結果は200項目以上に分けて数値化される。鎌谷さんは聴覚から情報を取得するのが苦手な一方で視覚からの情報取得はおおむね問題ないことが分かった。この結果からAIが導き出したのが写真付きのマニュアルの作成。作業工程や注意事項が一目で分かるように工夫されている。さらに鎌谷さんは左右の概念を理解しづらいという特性も見えてきた。そのため野菜を置く場所はトレーの色やアルファベットなどの簡単な文字を使って理解できるようになっている。こうした工夫によって今では障害のない人と遜色ない作業時間で仕事ができている。高橋陽子社長は14年かけてこうしたシステムを作ったという。開発のきっかけとなったのが重度の知的障害がある長男、遼の存在。障害があることで多くの機会を奪われてきたと感じてきた。現在二十歳になった遼は高橋さんの会社で就労に向けた訓練を行っている。環境や職場を変えることができれば誰もが働けるようになる。その思いでシステムを企業に提供している。こうした職場の変化は障害のない人たちにも影響を与えている。職場の同僚は自分たちの仕事の効率もよくなったと感じている。「誰もが自分らしく働けるようにしたい」という思いは職場に新たな変化を生み出している。