提言をまとめた国家安全保障戦略研究会は、自衛隊の元最高幹部と元高官たち。現場で感じた課題を洗い出し政府に伝えようと議論を重ねてきた。議論の記録では当初から敵地を攻撃する能力が必要との認識が示されていた。元統合幕僚長の折木さんは現役時代、北朝鮮や中国のミサイルの能力向上を前により強い抑止力が必要だと感じていた。自衛隊はこれまで相手が発射したミサイルを迎え撃つミサイル防衛を柱とした体制を取ってきたが、近年新たなミサイルの開発などによりこれまでのミサイル防衛では防ぎきれないという指摘が出ていた。その解決策として敵地を攻撃できる能力の保有についての意見が相次ぎ、そこで専守防衛との関係が議論となった。政府はかつてミサイルなどによる攻撃を防ぐ際、他に手段のない場合は相手の基地を叩くことは自衛の範囲に含まれると答弁している。専守防衛から逸脱しないという見解を示す一方で政策判断としては能力を持たないという姿勢を堅持してきた。元陸将の磯部さんは専守防衛のもと現場では本来必要な能力や活動まで過度に制限されてきたのではないかと感じてきた。元防衛事務次官の黒江さんは議論の中で専守防衛の意義を強調した。研究会では専守防衛のもとでも敵地攻撃能力を持てるという政府見解を実践すべきだと結論、表現については反撃能力という言葉に修正された。